心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
66 一緒に寝たい
王宮から帰った夜。
マリアはベッドの上に座り、枕を抱きしめていた。
真っ暗な部屋。
もう寝なくてはいけない時間なのに、全然眠くならない。
光のカケラに群がる貴族達の光景が、マリアの頭から離れずにいた。
「はぁ……」
何度目のため息だろうか。
マリアはため息をつくたびに、枕を強く抱きしめた。
こわい……。もうここはあの檻の中じゃないのに。
もう怖い人は誰も来ないのに。
我を忘れて興奮する貴族の姿を見て、マリアは自分が監禁されていた頃を思い出していた。
当時は日常のことであったが、幸せな生活を知ってしまった今では恐ろしく感じてしまう。
なぜあんなにも普通でいられたのか。
1人暗い部屋にいるマリアは、恐怖から眠ることができずにいた。