心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「おはようございます。グレイ様」
机の上には、グレイが毎朝飲んでいるお茶がしっかりと用意されている。
誰にも声をかけずに、いつもよりも数時間早く来たというのに、なぜこんな完璧に準備ができるのか。
グレイは相変わらずな完璧執事、ガイルを呆れた目で見つめた。
「年寄りは早起きなんだな」
そんな嫌味を言っても、ガイルは表情を変えることなく淡々と言い返してくる。
「楽しみなことがある日にだけ早起きをするのは、幼い子どもと一緒ですよ。グレイ様」
「どういう意味だ?」
「本日は、マリア様が3ヶ月ぶりにお帰りになる日ですからね」
「!」
そうか。昨夜そんなことを言っていたな。
思い出したと同時に、グレイはジロッとガイルを睨みつけた。
まるで、マリアが帰ってくるのが嬉しくて早起きをしたかのように言われたからだ。
身長はとうにガイルを抜かしているし、伯爵としての仕事もすでに1人で全てこなしているというのに、幼い子ども扱いに腹が立つ。
23になっても、まだガキ扱いしてくるとは……このジジイ。
そう心の中で舌打ちしつつ、グレイはマリアの話題にのることにした。
グレイが直接文句を言ったところで、ガイルには何もダメージを与えられないのだから。