心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

68 護衛騎士レオの混乱


 この国で最北端にある領地へ浄化の旅に出て3ヶ月。
 やっと王都へ帰ってきたレオは、目の前で落ち込んでいる聖女マリアを見て、どう声をかけようか迷っていた。


「はぁ……」


 自分の部屋のソファに座り、白いクッションを抱きしめたまま溜息をついているマリア。
 月のない日ではないのに、黄金の瞳は輝きを失くしている。

 ここまで落ち込むのも無理はない。
 あれほど会いたがっていたグレイに、意味もわからずに拒否されてしまったのだから。



 結局あの後も抱きしめさせてあげなかったし、理由も言わないし、マリアにとってはショックだよな……。



 3ヶ月ぶりに一緒に食べる朝食も、ほぼ無言であった。
 グレイの口数が少ないのはいつものことだが、今日のマリアにはその態度すら冷たく感じてしまったのかもしれない。

 マリアの暗い表情に真っ先に気づいたメイドのエミリーは、朝食後だというのにマリアの好物であるデザートを求めて調理場に行ってしまった。
 今、部屋にはレオとマリアの2人だけである。

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