心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「重病の場合は完治とまではいきませんが、それでも瀕死の状態からは回復できるそうです。『聖女様の奇跡の薬』として、出来上がってすぐに完売してしまいます」
「ここの研究費が少しでも増えるなら嬉しいわ」
「ですが……本当によろしいのですか? マリア様の取り分を、全て研究室の研究費に回してしまうなど……」
「いいの。私は光を出すことしかしてないし。もっと遠くの地域にも届けられるように、研究を進めてもらえたほうが嬉しいもの」
「マリア様……!」
白衣を着た男女の研究員達が、目を潤ませながらマリアを見つめた。
ここの研究員はみんな研究が大好きで、よく徹夜をしているせいか目の下にクマができている者ばかりである。
マリアは彼らにニコッと微笑んでみせてから、研究室を出た。
「マリア、お疲れ」
研究室の入口に立っていたレオが、重い研究室のドアを代わりに持って閉めてくれる。
研究室は地下で窓からの侵入の恐れがないため、護衛騎士であるレオはいつも入口に立って警護しているのだ。
「ご機嫌だけど、うまくいったの?」
「うん。失敗せずに光を全部瓶に入れられたわ」
「へぇ〜! すごいじゃないか」
そんな会話をしながら階段を上り終わると、煌びやかな王宮の通路の大きな柱に寄りかかり、腕を組んで立っている人物が2人の目に入った。
金色の前髪は半分だけ長く、少し目つきの悪いエメラルドの瞳が見え隠れしている。口はへの字に曲がっていて、不機嫌さを隠そうともしない。
長身でスタイルの良い、この国の第2王子……エドワード王子がマリアを睨みつけている。
「エドワード様!」