心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
グレイはガイルから顔を逸らし、椅子に座った。
気づけばエドワード王子がこの部屋に入ってきた時から、ずっと立ったままであった。
トスッと背もたれに寄りかかり、先ほどのガイルとのやり取りを思い浮かべる。
……結婚を反対したことを、マリアは喜んだ?
そうハッキリと。
あのガイルが目を見開くほどハッキリと答えていた。
きっと間違いないのだろう……と思える。
でも、反対されてなぜ喜ぶ?
マリアもあの生意気王子と結婚したくなかったということか?
反対されて、安心したということか?
マリアがなぜ喜んだのかまではわからなかったが、グレイは自分の仮説にニヤリと口角を上げた。
その後、ゆっくりと紅茶を飲み始めた頃になって、マリアとレオが戻ってきた。
王子は無事馬車で帰っていったらしい。
「あの……お兄様。突然ごめんね」
マリアはまだ眉が下がっていて、困った顔のままだ。
それほど王子と結婚したくなかったのか、とグレイはさらに機嫌が良くなる。
いつの間にか、胸を覆っていたドス黒い感情は消え去ったようだ。
「マリアが謝る必要はない。どうせ、エドワード殿下が勝手に言い出したことなんだろ?」
「そうだけど……」
「気にするな。マリアも、勝手に結婚するなんて言われて面倒だっただろう」
「あはは……」
苦笑いするマリアの頭を無性に撫でたくなり、グレイは立ち上がってマリアの側に近寄った。
見上げてくる愛らしいマリアの頭を優しく撫でると、マリアが少し頬を赤らめてはにかんでいる。
……可愛いな。