心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「ああ、そうかよ。マリアは昔から兄が大好きだからな! 俺のことなんか好きでもなんでもないしな!」
「えっ?」
マリアの目がパチッと丸くなる。
エドワード王子をジッと上目遣いに見つめたマリアは、ニコッと微笑みながら答えた。
「私はエドワード様のこと好きだよ?」
「はあ!?」
王子の顔がボッと真っ赤になり、怒ったように叫ぶ。
離れているものの会話は聞こえているのか、レオが真っ青な顔であわあわしている。
その場からグレイの部屋を確認しているのか、2階の窓を見上げたり王子とマリアを見たり、顔をぐるぐると動かしていた。
「おっ、俺のことが好きって……だ、だってマリアは兄が大好きだってさっき……」
エドワード王子もレオと同じくらい動揺している。
先ほどグレイの前に立っていた堂々たる王子の姿はそこにはなく、今は口のうまく回っていない顔の真っ赤なただの美青年だ。
「お兄様はもちろん大好きだけど、だからって他の人を好きじゃない……なんて思ってないよ。エドワード様もレオもガイルも、みんな好きだよ」
「あ……そういう……」
一瞬で我に返ったのか、王子は見るからにガッカリと肩を落とした。
顔をぐるぐると動かしていたレオも落ち着いたらしく、大きなため息をついているのが目に入る。