心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「あの、エドワード様。このドレスはもしかして、今度のパーティーの?」

「そうだ。マリアに合う色を考えたら、こんなにたくさん候補が挙がってしまってな」

「この中から私に選べってこと?」

「は? 選ぶのは俺に決まってるだろ?」


 は? と、全く同じ反応をしかけたマリアは、なんとかその言葉を止める。
 じゃあなぜ呼び出したのかと問いかけたい気持ちも、まだ胸にしまったままだ。


「今日呼び出したのは、実際にマリアに着てもらいたかったからだ」

「……え? 着るの? ……これ全部?」

「ああ。着た姿を見て、1番似合っているドレスを選びたいからな」

「…………」



 エドワード様ってば……ドレスを着るのがどれだけ大変なのか、知らないの? 
 3着の衣装合わせだって疲れるのに、7着だなんて……。



 しかも、今日は月のない日。
 マリアの治癒の力が使えない日だ。たとえ体調が悪くなったとしても、治すことができない。

 王宮内にある研究室にはマリアの治癒の力で作った薬があるが、それを自分には使わないようにと伝えている。
 生死に関わる場合は別として、次の日になれば治るマリアに、大事な薬を使う必要はないからだ。


「どうした? どれも気に入らないのか? なら、全部作り直して──」

「いいえっ! 着ます!」


 顔面蒼白になりかけたデザイナー達を見て、マリアはすぐに答えた。
 そして、これは気合いを入れてがんばらなくては……! と気持ちを切り替えたのだった。


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