心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 そう言ってマリアが起きあがろうとすると、クラッと目眩がした。
 倒れ込みそうになるのを、ベッド横の椅子に座っているエドワード王子が支えてくれる。


「ほら、全然大丈夫じゃないだろ。すぐに治癒の薬を飲め。王子命令だぞ」

「……だから、これはただの疲れなの」

「そんな真っ青な顔で何言ってるんだ? ずっとあの部屋にいたのに、倒れるほど疲れるわけないだろ」


 頭がクラクラする。
 ここまで疲れを溜めたことのなかったマリアは、初めての感覚に戸惑いつつ、何もわかっていない王子に苛立ちも感じていた。



 もう……本当にわかってないんだから。



 ムッと拗ねた顔で、マリアは至近距離にいるエドワード王子をジロッと上目遣いに睨む。


「ドレスの試着って、思ってる以上に疲れるんだよ?」

「え?」


 エドワード王子と、その後ろに立っているレオがキョトンと目を丸くする。
 部屋の隅に立っているメイド達が、男性陣に見えないよう小さくうんうん頷いているのがマリアには見えていた。


「今、ドレスの試着が疲れるって言ったか?」

「そうだよ」

「マリアは、ドレスの試着をしたから疲れたのか? だから倒れたのか?」

「え? ……う、うん。7着はちょっと……多かったかなって……」


 真剣な顔で何度も聞いてくるエドワード王子に、マリアは一瞬怯んだ。
 実際にそうだとしても、こう何度も『ドレスの試着をしたから倒れたのか』と言われると、なんとも情けないような気分になる。


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