心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「さあ、マリア様。あとはこのティアラをつけたら完成です!」

「ティアラだなんて……まるでお姫様みたいね」


 キラキラと輝く宝石のたくさんついたティアラを見て、マリアはため息混じりに呟く。
 とても可愛いとは思うのだが、ここまで豪華なティアラはいかにも王族関係者しかつけられないような代物だ。
 それを自分がつけることの意味を考えると、マリアは気が重くなってしまう。


「今回、マリア様はエドワード殿下の婚約者として紹介されますから……」


 マリアの心情がわかっているエミリーは、遠慮気味にそう言うなりティアラを丁寧に手に取る。
 頭にのせてもらうため、マリアはドレッサーの前にある椅子に座った。


「うん。仕方ないよね」

「……マリア様を守るための嘘ですから」

「……ねぇ、エミリー。私ね、エドワード様に言ったの。お兄様が恋愛の意味で好きだって」

「えっ?」


 驚いたエミリーが手元を震わせたので、2人で慌ててティアラを押さえる。
 ティアラが無事でフーーと安堵のため息をつくと同時に、エミリーが話の続きを促してきた。


「すみません。それで、その……エドワード殿下はなんと?」

「……諦めないって」


 マリアの返答に、エミリーは特に驚いた様子もない。
 でしょうね、とでも言いたそうな顔をしている。
 そんな落ち着いたエミリーを見て、マリアは自分の心の痛みを打ち明けることにした。

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