心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「あの、ごめんなさい。もう大丈夫……」

「本当か? 無理しなくてもいいぞ」

「ほ、本当に大丈夫だから。早く行こう」


 レオの背中に隠れるようにして言うマリアを、グレイが訝しそうな目で見ている。
 不機嫌な顔をしているのはわかっていても、マリアにはどうすることもできない。今普通でいられるのは、このレオという壁のおかげなのだから。
 レオなしでグレイと向き合うには、まだ少し時間がかかりそうだった。


「ほら。もう行ったほうがいいんじゃない? 俺もそろそろ集合時間に間に合わなくなっちゃうし」


 レオのさりげないフォローのおかげで、グレイはやっとマリアから視線を外してくれた。


「……じゃあ行くか」

「そうしよう! ほら、マリアもエミリーと一緒に」

「うん。ありがとう、レオ」

「いいけどさ、馬車では2人きりだってこと忘れないでね」

「あっ」


 護衛騎士のレオは、馬車には乗らずに馬に乗って移動をする。
 馬車の中ではグレイとマリアの2人きりの空間になってしまうのだ。
 自分の前を歩くグレイをポーーッと見つめながら、マリアはなんとか気持ちを整えるのだった。






「じゃあ、行ってきます」

「お気をつけていってらっしゃいませ」


 使用人達に見送られながら、馬車は王宮に向けて出発した。
 狭い空間にグレイと2人きり──。
 マリアは外を眺めるフリをしながら時間を潰そうと思っていたが、予想した通り先ほどの件をグレイに尋ねられてしまった。


「……で、さっきのはなんだったんだ? 体の具合が悪かったんじゃないのか?」

「…………え、と」

< 666 / 765 >

この作品をシェア

pagetop