心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「あの、ごめんなさい。もう大丈夫……」
「本当か? 無理しなくてもいいぞ」
「ほ、本当に大丈夫だから。早く行こう」
レオの背中に隠れるようにして言うマリアを、グレイが訝しそうな目で見ている。
不機嫌な顔をしているのはわかっていても、マリアにはどうすることもできない。今普通でいられるのは、このレオという壁のおかげなのだから。
レオなしでグレイと向き合うには、まだ少し時間がかかりそうだった。
「ほら。もう行ったほうがいいんじゃない? 俺もそろそろ集合時間に間に合わなくなっちゃうし」
レオのさりげないフォローのおかげで、グレイはやっとマリアから視線を外してくれた。
「……じゃあ行くか」
「そうしよう! ほら、マリアもエミリーと一緒に」
「うん。ありがとう、レオ」
「いいけどさ、馬車では2人きりだってこと忘れないでね」
「あっ」
護衛騎士のレオは、馬車には乗らずに馬に乗って移動をする。
馬車の中ではグレイとマリアの2人きりの空間になってしまうのだ。
自分の前を歩くグレイをポーーッと見つめながら、マリアはなんとか気持ちを整えるのだった。
「じゃあ、行ってきます」
「お気をつけていってらっしゃいませ」
使用人達に見送られながら、馬車は王宮に向けて出発した。
狭い空間にグレイと2人きり──。
マリアは外を眺めるフリをしながら時間を潰そうと思っていたが、予想した通り先ほどの件をグレイに尋ねられてしまった。
「……で、さっきのはなんだったんだ? 体の具合が悪かったんじゃないのか?」
「…………え、と」