心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 お話ししてるのかな?
 笑ってるのかな?
 腕組んだりしてるのかな?
 ……好きになったりしてないかな?



 ズキズキと痛んだり、モヤモヤと気持ちが暗くなったり、とてもこれから楽しいパーティーが待っているとは思えないほどの精神状態の悪さだ。
 やっとで顔を上げたエドワード王子が、そんなマリアの顔色に気づいて近づいてきた。


「マリアこそ大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」

「エドワード様……」


 なんて答えていいのかわからず、ただ名前を呼んで王子を見上げる。
 バチッと目が合った瞬間、王子は「うっ」と言ってマリアから少し距離を空けた。


「そ、その……マリア。そのドレス……」

「あっ。お礼を言うのが遅くなってごめんなさい。素敵なドレスをありがとうございます」

「ああ。……いや、じゃなくてだな。その……すごく似合ってる……ぞ」

「えっ」


 王子にドレスを褒められたマリアは、頬を赤く染めて王子を見上げた。近い距離で見つめ合う2人──という展開を想像していた執事は、次に続いたマリアの言葉を聞いて肩をガクッと下げた。


「このドレスを着ているの、もう見てるじゃない」

「…………」


 頬を赤く染めるどころか、何を言っているんだとばかりにキョトンとしているマリア。
 そんなマリアの様子に、照れていたはずの王子もスンッと真顔になった。

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