運命の人

 「澪?どうした、ぼんやりして」

 仕事終わりに待ち合わせて、連れて来てもらったイタリアンレストラン。
 予約困難なお店だからすごく楽しみにしていたのに、前菜を味わうこともせずただ口に放り込み、考え事をしてしまっていた。

 「すみません。ちょっと頭の中がぐちゃぐちゃで」

 「俺でよければ相談に乗るよ?」

 如月さんの優しさが胸をキュッと締め付ける。
 私を想ってくれて、寄り添ってくれて、優しい言葉をくれる。
 如月さんのように愛してくれる人はこの先もう絶対に現れないだろう。

 「転勤なんてなければいいのに」

 呟くように言うと如月さんの表情が険しくなった。

 「転勤?澪、辞令出たのか?!」

 如月さんがあまりに動揺しているのを見て慌てて否定する。

 「しないです。転勤の話は来ていないです。でも」

 佐々木くんが転勤すること、転勤して来た人たちが恋人と別れていること、自分にもいつか辞令が下りることを伝えた。

 「やっぱり転勤があるんだね」

 「やっぱり?」

 聞くと友達からMRには転勤があると聞かされたと教えてくれた。
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