四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!
「四季くん、なに読んでるの?」

お昼休み。

午前中に戻ってきた数学のテストの答案用紙を持って、四季くんと待ち合わせた図書室に向かった。

四季くんは読んでいた本を閉じて、
表紙を見せてくれた。

有名な童話。
時々挿絵が入ってるページがあって、読みやすい児童書だった。

四季くんが児童書を読んでるのは珍しい。

「好きなの?」

「ううん。誰かが棚に戻し忘れたみたい。ここに置きっぱなしだったから、シュリを待ってる間に読んでただけ」

「そっか」

「それで?どうだったの?」

四季くんの隣に座って、私は持っていた答案用紙を、裁判の「勝訴!」みたいな感じで広げて見せた。

「おー。六十五点!」

「えへへー。赤点回避だよ!」

「よく頑張りました」

「イイ点数とは言えないけど。補習も回避できたし、四季くん本当にありがとう。あとで皐月くんにもお礼言わなきゃ」

「皐月?」

「四季くんが勉強教えてくれてるとき、ずっと一緒に待っててくれたから」

「あはは。いい子だね」

「ね。皐月くんってたまに…いじわる言うけどやさしいよね」

「違うよ。シュリがいい子だねって」

「私?」

「もちろん皐月も分かりにくいけどいい子だしやさしいよ。でも、ひとにちゃんと感謝できるシュリもいい子」

「そんなの当たり前だよ」

「当たり前のことを当たり前にできることがいい子なの」

本当に四季くんは私に甘すぎるよ。
みんなが普通にしていることをこんなに褒めてくれるなんて。

これも彼女の特権なんて言われちゃうのかな。
…それでもいい。
四季くんを他の子に取られちゃったら生きていけない…。
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