造船王はその愛を諦めきれない~その人は好きになってはいけない相手でした~
わたしは次の日に、怜士さんに電話をした。
怜士さんは、前日に会った時とはまったく態度が違って、とても冷静で事務的だった。

もう、気持ちは冷めてしまったのだなと思い知らされる。
あんなひどい仕打ちをしたのだから当然だ。

もう一度話をしたい伝えると、調査が終わるまでしばらく待って欲しいと言われ保留になった。

それから一週間後には、ウィステリアマリン側の調査が終わったという連絡が入った。
その報告もしたいから、できれば家に来て欲しいと言われ行くことになった。

中森のおじさんとお父さんには、わたしより先に会社で説明をする時間を設けているらしい。
それが終わってからなので、わたしが会うのは夕方になった。

出かける前に、先に話を聞いたお父さんから連絡があった。
今日は、中森さんと飲んでから帰るという連絡だった。

どんな話だったのか詳しく聞きたかったが、お父さんは怜士さんから直接話を聞いた方が良いと、教えてはくれなかった。
ただ、「大丈夫だよ」とだけ声をかけてくれた。

雅さんと凛ちゃんもアメリカから帰ったらしく、ふたりにも会って挨拶をしなければならない。
ふたりのおかげで怜士さんに出会えたし、いろんな経験をさせてもらうことができた。

会えなくなるのは寂しいけれど、大好きなふたりのことはずっと応援したい。

怜士さんと、もっとたくさんデートをしたかったな。
出会ってからほんの数ヶ月だけなのに、どの思い出もとても色濃くて、簡単には忘れられそうもない。
毎日起こるすべてのことがとても楽しかった。

しっかりと自分の気持ちを伝えてからお別れをしよう。
今さらと思われるかもしれないけれど、けじめはつけなくっちゃ。

久しぶりに電車に揺られ、ベリが丘へと向かう。

緊張と寝不足のせいか、電車に酔ってしまった。
ほんの五分ほどで吐き気が込み上げる。

船を降りてからずっと、まともに食べていなかったせいか、ここのところ体調が良くなかった。
ずっと胃がむかむかとしていて、食欲も湧かない日々が続いている。

耐えきれなくなって一度電車を降り、トイレで吐いた。

「おかしいな……」

熱っぽい気がする。風邪でもひいているのかな。

口をゆすぎながら洗面で自分の顔を見る。
なんとか化粧で誤魔化しているが、血色が悪い。

「酷い顔……」
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