笑顔の眩しい腹黒王子は、固い扉を蹴り破る

生真面目侍女と、腹黒王子

 モニカは見知らぬ部屋で、目を覚ました。
 
 天井近くにある窓からは、雲から顔を出す月が見えた。
 部屋に射し込む月明かりのおかげで、かろうじてあたりの様子が浮かび上がる。
 
 たったひとつの窓以外には、出入口の扉がひとつ。 
 狭い、薄暗い、埃っぽい。ここは一体どこだろう。
 暗闇にも少し目が慣れて、だんだんと頭もハッキリしてきた。モニカは身体をゆっくり起こしつつ、部屋をぐるりと見渡してみる。

(なるほど……)

 何段にも積み上げられた木箱に、雑多に置かれた袋の数々。どうやら、ここは物置部屋のようだ。
 埃の積もり方からして、直近で人が立ち入ったような形跡は無い。おそらくしばらく使われていないような……誰も寄り付かない場所にあるのだろう。
 
(私は、なぜこんな場所に?)

 モニカは頭を整理した。
 記憶を辿れば、最後に覚えているのは城の廊下。いつものように花瓶の花を整えていたところ、後ろから何者かに口を押さえられ、変な薬を嗅がされて……そして目覚めたら、このようなところで倒れ込んでいた。

(わけがわからないわ。なぜ私なんかを……)
 
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