十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
「フィーナちゃん、お花畑どうだった!?」

 トルメンタ伯爵家へと帰宅すると、いきなりディレットに連行された。お茶するには遅い時間なのだがテラスにはお茶を用意され、フィーナはさっそく事情聴取を受けている。

「とてもきれいな花畑でした。ちょうど見頃で」
「ええ、それで?」
「デートスポットで有名なだけあって、カップルだらけでした」
「あそこはそうなのよねー、それで?」

 当たり障りのない感想を伝えてみるものの、フィーナにも分かっている。ディレットが聞きたいのは、こんな無難な話では無いのだ。

「カミロ様が、花の名前をたくさん教えて下さいました」
「ええ!? あの子が? 花の名前を!?」
「はい。とても詳しかったですよ」
「そんなはずないわ……きっと花畑行くからって、フィーナちゃんのために調べたのね」
「いえ、そんなまさか」

 カミロの話を始めると、ディレットは前のめりになって話を始めた。母としても『仲人』としても、二人の進展が気になって仕方がないのだろう。

「あの堅物がデートする日が来るなんて……良かったわ、本当に良かった」
「あの、別にデートでは」
「他には? 他にデートらしいことは?」
「……デートではありませんが、手を繋ぎました」
「カミロが……フィーナちゃんと手を……繋いだ……!?」

 感極まったディレットはいきなり立ち上がり、こぶしを掲げて喜んだ。しまった、言うべきでは無かっただろうか。

「フィーナちゃん! カミロを、よろしくお願いね」

 ディレットの手が、フィーナの肩をがっしりと掴む。まるで逃がさないとでも言うかのように。
 この間から、トルメンタ親子は一体どうしてしまったのだろう。フィーナはディレットに揺さぶられながら、一旦悩むことを諦めた。

 ディレットから揺さぶられ、ゆらゆらと揺れるフィーナの手には、冷たい手の感触だけが残っていた。
< 20 / 65 >

この作品をシェア

pagetop