十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。

あなたには分からない

 四人目は警察官だった。
 五人目は城の役人だった。
 六人目は……七人目は……

 見合い相手であった彼ら全てに会って確かめるまでもない。きっとどの縁談もカミロが妨害したのだ。

 カミロを信じていたいフィーナの、淡い期待は外れてしまった。
 今日会った彼は、とくに問題は無さそうな男だった。真面目に騎士団に勤めていて、気さくで、女性への気遣いもできる人。そんな相手の前にも、カミロは口を挟みに現れた。

 今夜もハーブティーを望まれてカミロの部屋まで運んだけれど、フィーナの顔色は冴えない。どうしても、彼の行動に納得が出来なくて。

「どうした?」
「……」
「なにか言いたいことでもあるのか」

 カミロは昔から、フィーナの表情を読むことに長けている。フィーナが黙りこくっているだけで、すぐに気持ちを言い当てられてしまった。

「……私、以前お見合いをした方と会ってきたのです」

 声が震える。
 ひどい。悔しい。こちらの気持ちなど知らないで────

「聞きました。カミロ様が、彼らと会っていたこと」
「……そうか」

 カミロが、少し目を伏せた。ただ、返事はいつも通り『そうか』と言うだけ。なにも変わらない彼の様子に、フィーナは更に腹が立った。

「お前の結婚のために、彼らには建設的な話をしただけだ」
「どこが建設的なんですか。『縁談を止めてしまえ』って、そう言ったそうじゃないですか! そんなの、妨害です。私の邪魔をして楽しかったですか」
「邪魔?」
「そうです、カミロ様が彼らにそんなことを言わなければ、私は今頃誰かと結婚出来ていたかもしれないのに!」
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