十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。

カミロのハンカチ

 九人目の彼──アトミス騎士団の彼は応接室に通され、フィーナが来るのを待っていた。
わざわざトルメンタ伯爵家まで出向いてまで、これ以上フィーナに用でもあっただろうか。

「お待たせ致しました」
「ああ、ごめんフィーナさん……伯爵家にまで押しかけて。でも俺、責任を感じていて、耐えられなくて」
「責任?」

 彼はしどろもどろに話し始めた。責任を感じていると言われても、彼との縁談はもう終わった話だ。

「済んだお話ですし……もう責任など感じなくても」
「違うよ。責任感じてるのは、カミロ様に対してで」
「カミロ様に?」

 聞けば、彼は当番制で城の警護もしているらしい。その際に、城に勤務するカミロを見かけることもあったのだが、どうやら最近カミロの様子がおかしいようで。

「様子がおかしいって……どういうことですか?」
「ぼーっとしてるんだ。あんなキツかった人が」

 城でもカミロの言動の鋭さには定評があったのだが、ここ数日のカミロは魂が抜けてしまったように気力の無い様子であるという。
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