シュガーコート


 唇同士が軽く触れるキス。

 それに気づいた直後からもうなにも考えられなくなって、全身がふわふわ浮いているような感覚がおそってくる。

 いつの間にか不安も悩みもすべて消えていた。

「ごめん。嫌だった?」

 すぐに離れていく謙信にわたしはハッとして慌てて追いすがる。

「い、嫌じゃない!」

 反射的にそう返すけれど、猛烈に恥ずかしくなってきて、熱い顔を隠そうと謙信の肩に頭を押しつけた。

 謙信はギュッとわたしの背中に腕を回して言う。

「変わらない。ずっと好き。手を繋ぎたいのもハグしたいのも、――キスしたいのも千花だけ」

「ほんとう?」

「約束する。千花は?」

「わたしも。謙信だけ。ずっと、好きだよ」

 さっきまでこの場所で時間が止まればいいと思っていたけれど、やっぱりそれはやめた。

 わたしたちの気持ちは、卒業で離れてしまうようなものじゃない。

 これからも謙信と一緒にいろいろなことをしたい。

 手を繋いで一緒に知らないところに行きたい。

 それでもどうしても不安になってしまうときは、またキスをしよう。今度はきっとわたしから。

 謙信がわたしの手を引く。ローズトンネルの出口には太陽のひかりがさんさんと降り注いでいた。





(了)
< 139 / 139 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

君の隣で歌いたい。

総文字数/111,151

恋愛(学園)267ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
<<覆面SNSシンガー【linK】>> 五十嵐 凛夏 × <<爽やか二世アーティスト【haru.】>> 沢里 初春 二人の出会いが互いの音楽を変える 誰かのために歌う歌 君の隣で歌いたいんだ ♢♦︎♢ 2024.03.12 編集部のオススメに掲載していただきました。 表紙:フリー素材をお借りしています。 夏香子/powered by 簡単表紙メーカー カクヨム、小説家になろう、魔法のiらんどに掲載している「君の隣で歌いたい」を改稿したものです。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop