泣き虫の凛ちゃんがヤクザになっていた

12話

 凛ちゃんは私と舌先を絡み合わせながら、私の身体をきつく抱きしめる。
 彼の筋肉質な腕でグッと抱き寄せられているのに、全く苦しくない。それどころか、私は心地良いとさえ感じた。
 
 そして、ベッドの上に転がされて、慣れた手つきで服を次々剥ぎ取られた。
 凛ちゃんの身体は大きくて、胸板が厚くて、まるで鉄板のようだ。
 押さえつけられてしまうと、もう身動きが取れない。
 だけど、恐怖心は一切なかった。

 凛ちゃんの舌が私の首筋を這い、徐々に下りていく。肌に彼の吐息が当たるだけでも、私の身体は疼いた。
 凛ちゃんは右手で私の乳房をそっと掴むと、舌先で円を描くように乳輪の外側をゆっくりと舐める。彼の舌が動くたびに、私の身体が震えた。
「んっ、……ふ」
 しかし、同時に物足りなさも感じる。もっと敏感なところに触れてほしい。
「――もどかしいか?」
 凛ちゃんの熱っぽい声が聞こえる。その瞬間、私は焦らされているのだと分かった。
「――っ、いじわる、しないでよ」
 私がそう言うと、凛ちゃんは舌先で胸の突起を弾いた。
「……ッあ」
 突然身体がビリッと痺れ、私は卑猥な声を漏らした。
 それが恥ずかしくて、私は咄嗟に手で口を塞ぐ。
 しかし、それを凛ちゃんは許してくれず、私の手を掴んで退かせる。
「声聞かせろよ」
「やっ、あ……、……んっ、ふ、ぅ……、や、だぁ……」
 凛ちゃんは止めどなく私の乳首を舐めたり吸ったりして、私の反応を楽しんでいる。同時に、反対側も指先で撫でたり弾いたりする。
 私はそのたびに身体が跳ね、はしたない声を出した。

「あっつ」
 凛ちゃんは身体を起こすと、私を見下ろしながら、紺色のワイシャツを脱いでいく。
 すると、鍛え上げられた上半身と共に、胸元と腕に力強く彫られた和彫りが現れた。
 両肩に刻まれた龍の鋭い目が、まるで獲物を狙っているかのように私を睨んでいる。
 それを見た瞬間、私は怖気づきそうになった。
「……怖いか?」
 凛ちゃんは私の視線に気づいたのか、様子を窺うように尋ねてきた。
 私は反射的に首を横に振る。
 確かに入れ墨を見た瞬間は怖かったが、凛ちゃんの優しげな顔を見て、それはすぐに消え失せた。
 
 凛ちゃんはフッと微笑を浮かべると、私の唇に触れるだけのキスをしてきた。かと思うと、突然私の性器に指を這わせてきた。
「……ひゃっ!?」
 私は思わず、間抜けな声を上げた。
「お前、さっきから俺の足に股擦り付けてきてんの、気づいてるか?」
 凛ちゃんはニヤッと笑う。
 え?嘘……。
 よく見ると、私は両足で凛ちゃんの右の太ももを挟んでいた。
 完全に無意識だった。

 すると、凛ちゃんは私の両足を持ち上げて、股の間に潜り込んだ。
「えっ!?ちょっと――」
 凛ちゃんは舌先で陰核を撫でた。
「あッ――」
 突然襲い掛かってきた下腹部の快感に、私は思わず腰を浮かせた。
 私は強すぎる刺激から逃げようと身をよじらせるが、凛ちゃんは逃がすまいと私の腰を両手で抑える。
 凛ちゃんは私の性器を舐め、じゅるじゅると音を立てて吸った。
 凛ちゃんの熱い舌は生き物のように(うごめ)き、彼の舌が動くたびに甘い快感が全身を駆け巡る。
「あぁっ……、りんちゃ――、……ひっ、……ま、って、ぇ……」
 私は呆気なく果てた。
 絶頂で仰け反らせた身体を、凛ちゃんが抑え込む。
 目の前がチカチカする。
 
 私がまだ絶頂の余韻に浸っていると、凛ちゃんは陰核を舌で転がしながら、性器に指を挿入してきた。
 鋭い刺激が体内に広がっていく。
「ひっ……んっ、……ぁ、ま、……ッ、イ、く……、また、イ、っちゃ……ぁッ」
 外も、ナカも刺激されて、私はおかしくなりそうだった。
 凛ちゃんのされるがままになり、脳がビリビリと痺れ、私は何度も達してしまう。
 
 何度も果てた後、凛ちゃんは口淫を止めて、上体を起こした。
 頭がぼんやりとして、ボーッと天井を眺めていると、ガチャガチャとベルトを外す音が聞こえてきた。
 凛ちゃんは荒々しくズボンと下着を脱いで、私の股に自身の性器を擦り付けてくる。
 長くて、太くて、血管が浮き出て脈打っている性器が私の下腹部を刺激する。
 
「――欲しいか?」
 先端から透明な汁が溢れ、今にもはち切れそうな性器を擦り付けてくる凛ちゃんが、荒い息遣いで問いかけてくる。
 欲しいのは凛ちゃんのほうでしょ。
 そう言ってやりたかったし、何度も達したせいで、私はもう既にぐったりとしている。
 それなのに――。
「……ほしい」
 身体の奥がもっと強い刺激を求めており、私はそれに抗うことができなかった。

 凛ちゃんはサイドテーブルに手を伸ばし、引き出しから何かを取り出した。
 よく見ると、それはコンドームだった。
 それを見た私は、凛ちゃんはよくこの部屋で女の人と()()()()()()をしているのだろうか、とすごく野暮なことを考えてしまった。
 そんな思考を見透かしたのか、凛ちゃんは「余計なこと考えんなよ」と吐き捨てて、コンドームの袋を歯で食い千切る。

「今はお前だけだ」
 凛ちゃんは低く囁くと、一気に奥まで挿れた。
「あッ――」
 私の身体に鋭い快楽が襲い掛かり、私は獣のような声を上げて絶頂に達した。
 身体がビクビクと痙攣する。
「ははっ、挿れただけでイったのかよ」
 額に汗を滲ませながら、凛ちゃんは笑う。
 
 凛ちゃんは私が落ち着くのを見守ってから、ゆっくりと腰を動かし始めた。
 彼に揺さぶられ、私は待ち望んだ快感で全身が(とろ)けそうになる。
 私は凛ちゃんの背中に、彼の背中の龍ごと凛ちゃんにしがみ付いた。
 私のだらしのない声が部屋中に響き渡る。
 もう恥ずかしいなんて、そんなことすら考えられない。
 
 男性特有の、獣のような汗の匂いが、私の鼻腔をくすぐる。
 汗の匂いすらも私の脳をドロドロに溶かし、私は凛ちゃんの首筋に鼻先を擦り付けた。
 
 私を抑え込んで欲望のままに腰を打ち付ける凛ちゃんは、私の耳元で荒い息を漏らしている。
 何度も気持ちいいところを突かれ、私はそのたびに軽い絶頂を繰り返した。
 その激しい行為が、私のことを強く求めているのだと感じて、私はたまらなく凛ちゃんが愛おしくなった。

「――幸希」

 すると、凛ちゃんが突然耳元で私の名を呼んだ。
 再会してから初めて、凛ちゃんに名前を呼ばれた。

「ゆき、すきだ……。愛してる……」
 
 恍惚とした声で、うわ言のように凛ちゃんは何度も私の名前を呼ぶ。
「……ぁ、わ、……ッ、わたし、も、……んっ、すきぃ……」
 私は嬉しくて、涙がボロボロと零れた。

 昔のように「ちゃん付け」では呼んでくれないけれど、凛ちゃんに名前を呼ばれて、「好きだ」と言われて嬉しかった。
 私はギュッと凛ちゃんを抱きしめた。
 
「ゆきっ、ゆき……、こっち向け」
 凛ちゃんは私の顎を強引に掴むと、私の唇を貪った。
 彼の舌が私の歯列をこじ開けて、吐息さえも飲み込もうとする。
 そして、凛ちゃんは私の背中に手を回し、自身の腰のストロークを徐々に速める。

「ぁ、イく――っ」

 凛ちゃんは私を抱きしめたまま、私の一番奥に性器を擦り付けて、身体を大きく震わせる。
 それと同時に、私も奥を貫かれたことによって、絶頂に達した。
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