ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます！

ゆっくりと父さんをベッドに降ろした大地が、目を伏せる。

「───まいさん。
僕、ずっとね……お父さんの子供だったら良かったのにって、思ってたんだ」

ポツリと漏らされた一言に、胸が詰まる。

ふいに、私たちが《姉弟でないこと》を知った、あの日の大地の悲痛な声がよみがえってきた。

『僕は、ちっとも嬉しくなんかない』
『僕は、まいさんと姉弟でいたかった』

そう言って、泣き笑いを浮かべた大地。

大地は、私や父さんとの血の繋がりがなかったことに、失望していたんだ。それも、私が考えていた以上に、深く。
そのことに気づいて、私は何も言えなくなってしまった。

「───あぁ、そんな顔、しないで」

大地が私を見て、せつなげに笑った。

「お父さんや、まいさんと血が繋がってなかったこと……僕にとっては、本当に悲しい事実だったけど」

眠っている父さんを気遣うように、大地は声をひそめた。
父さんの高いびきだけが、場違いに響いた。

「まいさんとのこと……お父さんがこんなに喜んでくれたのは、僕達に血の繋がりがなかったからなんだよね？
僕がもし、お父さんの子供だったら……まいさんの弟だったら、逆に、お父さんを、すごく哀しませてしまっていたんだ。

そんな当たり前のことにすら、僕は気づけずにいた。
僕は、僕自身の一方的な想いだけで、まいさんを困らせていたんだなって……初めて、実感したよ」