一途な後輩に、秘密に溺愛されてます。


「じゃ、センパイ。卵焼きもらっていい?」


「図々しいなあ……別に良いけど、私が作ったやつだから悧來の口に合うかわかんない」



そう伝えると、悧來は目尻を少し細めて頬を緩めて言った。


少し、真剣な空気を含んで。



「ーー俺は、恋奈先輩が作った卵焼きが食べたいの」


「ーー……、そ」



何だろう、一瞬、一瞬だけ。


今、なにか。





「ーーじゃ、センパイ。食べさせて?」


「は?」



目の前にぱち、と星が飛んだ。思わずすっとんきょうな声が出た。



こいつ、本気で言ってるの?



そう目で語りながら彼を疑う態度をとる。



さっきまでの何か違う空気が嘘みたいに弾けた。なあんだ、気のせいか。




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