【受賞】レイニー・デイ ~その愛を消して~
 九十九パーセントを超えたとき、京太郎が幸せそうに笑う画像が映し出された。

 その画像も崩れるようにして消えていく。

 孝行は必死に復元を試みる。

 が、なにをどう操作しても、それは復活しなかった。

***

 心春と和俊は複雑な顔で署に戻り、顛末を報告した。

 上司たちは最初、信じなかった。

 だが、ロボット工学の権威である石黒孝行の証言、残された機械たちの鑑定書などを出され、信じざるを得なくなった。御遺体の遺伝子検査の結果もまた、その証言を裏づけた。

 警察の上層部はそれをそのまま発表することはなかった。

 アンドロイドを含めたもろもろの機械は解体され、処分された。

***

 偏屈な元科学者が身元不明の四人を殺し、元恋人を含めて五人の死体を遺棄した。

 警察はそう発表した。

 彼がクローンを作ろうとしたこと、アンドロイドを作ろうとしたことは発表されたが、それらは未完のままだったとされた。警察では遺体がクローンである証明も、アンドロイドが実際に動いていた証明もできなかったからだ。

 京太郎自身が埋められていたことは、正式には発表されなかった。

***

 記者発表があった日、心春と和俊は別件の捜査で住宅街にいた。

 事件は日々起きて、刑事たちを休ませてはくれない。人と人が共にすむことの軋轢(あつれき)は、幸福も不幸も飲み込んで流れ続ける。

 住宅の庭に咲く紫陽花を見て、心春はふと零した。
「如月さんは幸せになるためにクローンを作って、それでも幸せにはなれなかったんですよねえ」

「本人だけは幸せだったんじゃないか? 熱中して、人生をかけて彼女のことを考えて。俺は嫌だけどな」
 和俊が他人事のように答える。

「奥さん、大事にしてくださいね」

「してるよ」
 不服そうに和俊は言う。空を見上げ、確かめるように手を差し出した。天からの雫がぽつんと当たる。

「また降って来たな」
 和俊が傘を開いた。

 心春もまた傘を開いた。

 レイニーを思い出し、空を見上げた。

 無数の水滴は、地上をめがけて静かに降り注いでいた。





* 終 *
< 19 / 19 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:4

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない

総文字数/77,331

恋愛(その他)121ページ

マカロン文庫新人コンテストエントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
星森耀理(ほしもり ひかり) 平凡な書店員。 彼氏と元親友に裏切られて傷心中。  ×  月嶺史弥(つきみね ふみや) 大人気作家。 三年前から耀理を愛し、彼女のために作品を書き続けている。 彼氏にふられた耀理(ひかり)は傷心のままサイン会に行く。 推し作家にプロポーズされた耀理は作品の再現シーンだと気付いて心躍らせる。 ヒロインの言葉で承諾のセリフを返したところ、作家は「婚姻が成立だ」と叫んで仮面をはがす。 現れたのは、三年前に耀理に暴言を吐いた男だった。 激重の彼の愛を拒否する耀理。 元彼や元親友の襲撃から守ってくれた彼に次第に引かれていくのだが……。 お詫び P107が前ページとダブっているのですが、コンテスト期間中のために修正できません。 後日、修正いたします。
表紙を見る 表紙を閉じる
柚花は宝石店『パリュール』の副店長をしている。 恋人を取られ、店長が入院して公私ともに大変。 そんなとき憧れだった人が「店長代理」としてやってきて……。 9月30日完結。 お読みいただき、ありがとうございます! 24/10/7 中短編部門で1位を獲得しました! 初の1位に感無量です! みなさま本当にありがとうございます!!! 25/1/30 めちゃコミック×LScomic×魔法のiらんど漫画原作コンテスト 「エリート上司との偽装恋人」部門にて 佳作を受賞いたしました! ありがとうございます!
表紙を見る 表紙を閉じる
第2回ベリーズ文庫デビュー応援コンテストにて .。゚+..。゚+. 大賞 .。゚+..。゚+ を頂きました。 みなさまありがとうございます。 ☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。 24/11/10にアンソロジー発売! 『悪い男の極上愛』に 『世界最悪の外交官に偽装告白したら 溺愛が待っていました』 とタイトルを変更して収録。 書籍では大幅に加筆修正して、 ヒーローはもっとかっこよく、 溺愛シーンも増やしています! ☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。 朱鳥(あすか)は売れないウェブライターだ。 迷子を保護しようとしたとき、悪徳外交官と知り合う。 幼女誘拐で世界に悪名を馳せて 世界中から敵視されている外交官だ。 外交官特権で逃げたので話題になった。 契約更新の特ダネのために彼に近付くのだが、 彼の甘い態度に朱鳥はよろめく。 彼は本当に誘拐をしたのだろうか。 真実はどこにあるのだろうか。 そんなとき、元カレが怪しい動きをして……。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop