生きたくても生きられない君と生きたくないのに生かされる僕の一年間ノート
4月。
4月30日 〜小児科〜 

「あのう……。」 
「は、はい。」 
「あなたですか?4月30日に来る、ノート持ってて、ボサボサ頭で、精神病んでそうな、ちょっとだけイケメン、って。」 
「はあ。あっ、このノート!どうしてあなたが⁉︎破れてるところ、テープで丁寧に……。」 
「あたしはその子の友達。小児科に長く入院してて。」 
「その子は?どこにいるか知ってる?」 
「……お空だよ。」  「死んじゃったの?」
「あなたは自分のことで気づいてなかったかもしれないけど、着々とあの子は死に近づいていた。それでも、あの子もあなたのことが好きだったから、大好きなあなたを元気にさせるために笑ってたんだよ。」 
「そんな。嘘だ!僕のことをそんな風に思ってくれてたのも、僕が変化に気づかなかったことも、しっ、死んじゃったことも!」 
「あなたの前では元気な姿を見せてたけど、毎日抗がん剤を点滴して、嘔吐して、体力はなくなっていってた。元気も1ミリもなかった。でもあなたと会う日は、そのためにあなたと会う時間をずらして抗がん剤治療をして、あなたに元気だよ、って会いに行ってた。」 
「点滴が増えてたときは?」 
「あれは生理食塩水と、ビタミン剤。抗がん剤じゃないのが増えた。もうほとんど前みたいに食べられなくなっていたから。鼻から栄養を入れている管も抜いて会いに行ってたよ。」 
「そんな状態で、僕は酷いことを言っていた気がする。気づかなかった自分に腹が立つ。」 
「もうステージ4で、緩和ケアが始まって、最後に元気を振り絞ってあなたに会いにいった3.31。あなたは隔離室だった。会えないまま、彼女は息を引き取った。ノートを残して。」 
「このノート、ください!」 
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