入れ替え婚 ~妹に婚約者を奪われたら冷酷と噂の妹婚約者に溺愛されました~
第七章 切ない選択
「遅くなってすまない。円香は無理に待ってなくてもいいんだぞ?」

 帰宅早々、円香に謝罪をする彰史に対し、円香はふるふると首を横に振って、笑顔で彼を迎え入れる。

「いえ。大変なときこそ支えたいですから」

 彰史が多忙を極めるようになったのは、旅行終えてからすぐのことだった。彰史は連日遅い時間の帰宅が続いており、土日も忙しそうにしている。

 自分に合わせる必要はないと、彰史はいつも円香に言ってくれるが、円香は今こそ妻として彼を支えるべきだと思っている。

 きっと仕事場では気を張ることも多いだろうから、せめて家にいるときにはゆっくりくつろげる環境を提供してやりたい。

「まったく。君の良妻ぶりには頭が下がるよ。ありがとう」
「ふふ、いいえ。ご飯召し上がりますよね?」
「ああ、頼む」
「すぐに準備しますね」

 円香は彰史が着替えをしている間に、作っておいた夕飯をささっと食卓に並べる。円香はすでに食事を終えているから、並べるのは彰史の分だけだ。

 初めは円香も彰史の帰宅に合わせて食事をとっていたのだが、遅いときは先に食べるようにと彰史に口酸っぱく言われるものだから、先に食事を済ませるようになった。

 その代わり、円香は彰史が食事をする間は向かいに座って絵を描き、彼との時間を持つようにしている。
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