入れ替え婚 ~妹に婚約者を奪われたら冷酷と噂の妹婚約者に溺愛されました~
第四章 最幸の一日、そして、再びの悲劇へ
 六月に入り、ぐずついた天気が多くなる中、約束の日の今日が晴れであることに、円香の心も晴れ渡る。

 ついついテンションが上がって鼻歌交じりに朝食を作っていれば、彰史に「ご機嫌だな」と、テンションの高さを見抜かれて恥ずかしくなる。

 照れ隠しに、そんなことはないと否定したくもなるが、今日の円香の機嫌のよさは彰史がもたらしてくれているものだから、嘘でもそんなことは言えない。

 円香は「楽しみなので」と小さく本音だけを漏らした。


 大事な今日の約束が交わされたのは二週間前のこと。

 彰史から円香へと提案されたそれは、円香の誕生日を祝うための誕生日デートであった。彰史に一日予定を空けておくように言われて、円香はその日からずっと指折り数えるようにして今日のデートを心待ちにしていたのだ。

 彰史とのデートは今回が初めてというわけではない。二人の関係が深まって以来、デートは何度か重ねているものの、やはり誕生日を祝うためのデートと言われれば、今日のそれは特別で、初めてのとき以上に心が躍っている。鼻歌が出るのも致し方ないだろう。
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