日常を返せ!
「……わたしが言っている事が嘘で、田山を殺しに行ったと思っているんですか?」

 わたしを犯人だと疑っている犬飼刑事の物言いに、わたしはイラつきながらも聞き返す。

「そうじゃないかと疑っている。ただ、そうなると動機が全くわからない。貴女が彼女を殺した時に何かメリットがあるのかは、現状では何も見つからないからな」

「さっきから黙って聞いていれば、娘を殺人鬼呼ばわりして不愉快です! これ以上、こちらから話すことなんてありません! 早く出て行ってください‼︎」

「も、申し訳ございません! 犬飼さん、ここは一旦帰りましょう」

「そうだな。他にも聞き込みをしないといけないからな」

 静かに話を聞いていた母の額に青筋が立つほど怒り、二人の刑事を追い出した。

 飛口刑事は眉根を下げて何度も頭を下げながら退出し、犬飼刑事は母の怒りを意に返さず無表情で部屋から退出して行った。

 二人が出た途端、乱暴に扉を閉めて怒りを露わにする母にどう声を掛けるか戸惑う。

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