日常を返せ!
「ルリカ、何で無視するんだよ。さっき突き飛ばしたのは謝るからさ。もう二度とあんなことしないって誓うから、こっちを向いてくれよ」

 縋るような声で中川が言うが、死んだ石井から返事をすることはない。

 担架を持っていた人がビニールシートを被せ直し、邪魔をする中川を忌々し気に睨みながら運んでいった。

「ルリカ、ルリカ……」

 手を伸ばして石井を呼ぶが、その声に返事をする者は誰もいなかった。

「帰ろう」

 わたしは植本と羽間にそう言って現場から離れた。

 二人は中川を気にしていたが、自分たちが声を掛けてもどうしようも出来ないと判断したのか、同じく現場を離れて行った。
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