日常を返せ!

励ます

 犬飼刑事のことは次の日のニュースで報じられていた。

 何者かの車に撥ねられ、その上頭を銃で撃たれたようだと言われている。

 そんなニュースをぼんやりと聞いていると、何かが割れる音がすぐ側で響いた。

 驚いて振り向くと、母が朝食を落としてしまい割れた食器とぐちゃぐちゃになった朝食だった物が床に落ちている。

「ちょっと、大丈夫⁉︎」

 わたしが慌てて片付けようとすると、母にその手を掴まれた。

「……母さん?」

「それはこっちのセリフよ。明良は大丈夫なのよね? 変な事に巻き込まれていないよね?」

 わたしを掴んだ手が震え、母がその場に崩れ落ち嗚咽を漏らした。

 犬飼刑事の訃報でわたしを守る人がいないと感じたのだろう。

……大丈夫なわけない。

 本当はいつ殺されるのじゃないか不安で仕方がない。

 でも、それを母に伝えたらどうなる?

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