日常を返せ!

見知らぬ場所と人

 ──はずだった。

 そう、そんな事を考えながら自分の部屋で眠ったはずだ。

 少なくとも、目を覚ましたら見覚えのない真っ白な部屋の冷たい床の上で、制服を着て寝ていたなんて事はあり得ない。

 ズキズキと鈍く痛む頭を抱えながら、わたしはゆっくりと体を起こした。

 どうしてここにいるのか心当たりがない。そもそもここがどこだか分からない。

 わたしが眠っていた部屋には、わたし以外に六人の男女が倒れている。

 よく見ると、全員が同じ市内の高校の制服を着ている。

 状況を知る為に誰を起こそうか迷っていたが、一人の女がわたしと同じ学校の制服を着ていたのに気付き、彼女を起こす事に決めた。

 もしかしたら知り合いかもしれない。

 わたしは静かに近付いてその女の顔を覗き込む。

 黒髪を一つに結び、黒縁の眼鏡を付けたまま眠っている女だったが、見覚えがない。

 ためらっても仕方がないので、とりあえず起こしてみることにした。

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