Happy Turn
太陽。

咲がいつものように早めに出社すると、この時間には見慣れない男性社員が笑顔で出迎えた。

「おはようございます!!高宮チーフって、いつもこんなに早いんですか?」

ニコッと笑ったその笑顔は、女性社員の間で『太陽の笑顔』と噂されているのを聞いた事がある。もちろん皆、目をハートにさせながら。

「おはよう。工藤君こそ、今日は早いんだね。」

工藤尋幸(クドウ ヒロユキ)。
彼が太陽というのなら、女性陣はさながら向日葵か…と、想像すると笑いが零れてしまいそうになるのを咲は必死で我慢した。

だが尋幸は咲の小さな表情の変化を見逃さない。

「今日は、これから大事な会議ですからね…。そうだ!上手くいったら、今日こそは飲みに付き合って下さいよ!!」

眩しすぎる!!と、目を細めたくなる程の笑顔に圧倒され…いつもならすぐに出るはずの拒否の言葉を、咲はすっかり忘れてしまっていた。

「じゃあ、帰りに迎えにきますね。お店は僕に任せて下さい。」
尋幸は笑顔を崩さずにそう言うと、咲の返事を待たずに「それではまた。」と告げて去っていった。

一人残された咲は、拒否の一言が出せなかった自分を正当化させようと思考を巡らせながら、熱いブラックコーヒーを身体へと流し込んだ。
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