あなたに愛されたい…青い空から舞う桜…

春はここから…1

カーテンに朝日が差している、ボーとした頭でも下腹部に僅かな痛みは感じている。

ずーと逃げて、逃げて迷って…


やっと一つになれた夜。そっと右を向けば大好きな人の寝顔、やっぱり私よりまつ毛長いよ。

長くてしっかりしている手、筋肉質の腕、私はこの腕に強く抱きしめられ何度も愛された。

触れたい…もう一度抱きしめられたい。


大好きな人のサラサラの黒髪に指をゆっくりと絡める…夢ではない。


愛された実感がゆっくり湧いてきて、スッート頬に涙が落ちていく…

寝ていたはずの彼の大きな手が私の涙を拭い、呼気が止まりそうなほどのキスの嵐。


もっと、もっと強く抱きしめて!


「 愛しているよ、桜 」



☆☆☆☆☆


三畳ほどの小さなアパートの部屋、薄い壁、朝から隣からのいつもの話し声、あーちょっとウルサイ…


これが私の日常、いつもの月曜日の朝。

暦の上では春なのに、今日は朝から強い風。

先週は夏のような気温になったのに、今日は真冬に逆戻り、こんなの体調管理も難しい。

ちょっとコンコンと咳が出る。


気合いを入れて仕事へ行こう、小さなテレビを出来るだけ他の部屋に迷惑にならない程度の音量にする。


ニュースで医者の記者会見。


よく見れば…


関東南部メディカルセンター、その顔は病院のトップである父と兄だった。


関東南部メディカルセンターは病床数1000、あらゆる専門医、病院を囲むようにホテル、マンション、スーパーなどまるで一つの街のような作りになっている。


全ては患者様とその家族のために、それが父の考え。


全国から毎日紹介状をもってやってくる、そのために新たに新しい病棟も建設中。


ここは患者様にとっての最後の砦のような所。


そして本来私は大病院の娘なんだけどね…


こんな狭いアパート暮らし。

兄である孝ちゃんが凄い手術を成功させたとのニュースだ。日本でも凄腕の脳神経外科医のスーパードクター。


サラサラの短髪の黒髪、引き締まった体に、長い足。


そしてなにより甘い顔、柔らかい声。考ちゃんは父の跡を継ぐ。


私はには関係ない…病院とは一切関係ない…

新藤家とも出来たら縁を切りたい…一番縁を切りたいのは考ちゃんだ。


私は何を考えているのだろう…考ちゃんと縁なんて切ったら、気安く呼ぶことも妹としての最高の切り札もなくなるのに、妹だから紙一枚の関係でも甘えられる。


私の大好きな人、好きになってはいけない人。


血のつながりの無い最高の兄。


知りたくなかったそんなこと、世の中どこにもお節介の人はいるよね…


感情なんてなくなればいい。


好きなの、いつからかもう分からないくらい今は好きでたまらない。

忘れたい…






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