金髪のカリスマ美容師(見習い)に髪を切ってもらうことになりました。

第3話 デートに行きました。

〇 学校・教室(昼休み)

友人の沙苗とお弁当を食べている紀菜子。

沙苗「へえ、デートか」
紀菜子「デ、デートなのかな?」
沙苗「そりゃあデートでしょ。男女が二人っきりで出掛けるんだから」

沙苗のコメントに顔を赤くする紀菜子。
それに沙苗は、苦笑いを浮かべる。

沙苗「練習相手に立候補するつもりはないけどさ。私もその魁聖さんって人に会ってみたいや」
紀菜子「え? ど、どうして?」
沙苗「だって、今や学園でも結構人気の宮ちゃんがホの字なんだもん。どんなイケメンなんだって話じゃない」

考えるような仕草をする沙苗。
それに対して、魁聖の顔を思い出す紀菜子。

紀菜子「いや、ホの字とかじゃないし……」
沙苗「でも、二人きりで出掛けていいって思ってるんでしょ? サッカー部の溝口君とかよりも、かっこいい訳?」
紀菜子「どうして、溝口君を引き合いに出すの?」
沙苗「そりゃあ、宮ちゃんが袖にしたからでしょ。サッカー部のエースなのにさ」

少し嫌らしい笑みを浮かべる沙苗。
それに対して、紀菜子は目をそらす。

紀菜子「だって、溝口君のこと何も知らないし……今まで喋ったこともないんだよ?」
沙苗「紀菜子って、結構純情だよね……いや、魁聖さんにホの字だからか」
紀菜子「それは……」
沙苗「まあ、次のデート頑張りなよ。私はさ、宮ちゃんの味方だから。応援してるよ。ちゃんとおめかししていくんだよ?」
紀菜子「あ、ありがとう……いや、ありがとうなのかな?」

口を大きく開けて笑う沙苗。
それに対して、苦笑いを浮かべる紀菜子。


〇 駅前・噴水の前(朝)

それなりのおめかしをした紀菜子が待っていると、魁聖がやって来る。

魁聖「紀菜子ちゃん、すまない。待たせてしまったか」
紀菜子「あいえ、私も今来たばかりです」
魁聖「ふむ……その髪型も似合っているな」

紀菜子の髪に注目する魁聖。
それに対して、苦笑いを浮かべる紀菜子。

紀菜子(やっぱり髪が一番なんだ……というか、髪以外見ていなかったり?)
魁聖「メイクも服も似合っている。紀菜子ちゃんはおしゃれだな」
紀菜子「あっ……ありがとうございます」

魁聖の言葉に、照れる紀菜子。
同時にほっと胸を撫で下ろす。

魁聖「さて、それじゃあ行くとしようか」
紀菜子「は、はい」

魁聖の言葉に紀菜子が頷き、二人が歩き始める。

魁聖「実の所、今日の行き先は決めていないんだ」
紀菜子「そうなんですか?」

紀菜子と魁聖が町中をゆっくりと歩く。

魁聖「紀菜子ちゃんは普段、どんな所に行くんだ?」
紀菜子「え? 私、ですか?」
魁聖「ああ、せっかくだからな。紀菜子ちゃんの趣味なんかを教えてもらえないだろうか?」

魁聖の質問に、動揺する紀菜子。

紀菜子「趣味、ですか」
魁聖「別に嫌なら構わないが……」
紀菜子「嫌ではないです。でも、つまらないかもしれませんよ?」
魁聖「いや、そんなことはないさ」

紀菜子の言葉に、笑顔を浮かべる魁聖。
二人が町中を歩いていく。


〇 ショッピングモール内・書店(朝)

魁聖「書店か。つまり、紀菜子ちゃんの趣味は読書ということか?」
紀菜子「ええ、一応そういうことになりますね……」

小説コーナーにて、周囲を見渡し苦笑いを浮かべる魁聖。

魁聖「俺は活字というものは、あまり得意ではない。紀菜子ちゃんのことを尊敬するよ」
紀菜子「いえ、別にそんなに特別なことはしていないというか……」

気まずそうに首を振る紀菜子。
それに対して、笑顔を浮かべる魁聖。

魁聖「さて、それなら次は俺の趣味の場所に案内するとしようか」
紀菜子「魁聖さんの趣味、ですか? それは結構、気になります」
魁聖「ふふ、まあ楽しみにしておいてくれ」


〇 ショッピングモール内・手芸用品店(朝)

紀菜子「こ、ここって……」
魁聖「ああ、実は裁縫が趣味なんだ」
紀菜子「すごいですね……」

周囲を見渡して驚く紀菜子。

魁聖「まあ、裁縫に限らないんだが、俺はハサミが好きなんだ」
紀菜子「はさみ、ですか?」
魁聖「美容師に憧れた時からか、仕事道具であるハサミを、俺はいつの間にか心から愛するようになっていたようなんだ」

魁聖の顔を見る紀菜子。
魁聖は、思いを馳せるかのように虚空を見つめている。


〇 町中・クレープの屋台の前(昼)

対面に座って、クレープを食べる紀菜子と魁聖。

魁聖「紀菜子ちゃん、今日は付き合ってくれてありがとう。お陰様で楽しめたよ」
紀菜子「いえ、私も楽しかったですから」
魁聖「それならよかった」

紀菜子の言葉に、笑顔を浮かべる魁聖。

紀菜子「それにしても、良かったですね。いいハサミが見つかって」
魁聖「ああ、収穫があったというのも喜ばしい事柄だ」

魁聖が購入したハサミが入った箱を撫でる。
そんな魁聖の顔をじっくりと見る紀菜子。

魁聖「……紀菜子ちゃん、どうかしたのか?」
紀菜子「あ、ごめんなさい。なんていうか……」
魁聖「うん?」

魁聖からの質問に、紀菜子が苦笑いを浮かべる。

紀菜子「魁聖さんの泣きぼくろって、そっち側にあるんだなって……」
魁聖「泣きぼくろ……ああ、確かにあるが、それがどうしたんだ?」
紀菜子「いつもは鏡越しに顔を見ていますから、逆側に見えるんです。それがなんだか、少しおかしくて」

魁聖が自分の泣きぼくろの位置を確かめる。

魁聖「……なるほど、紀菜子ちゃんとこうやって顔を正面から合わせるのは珍しいということだな」
紀菜子「はい、そうなんです」
魁聖「そうか……」

少し照れながらも笑い合う紀菜子と魁聖。
二人の間に、穏やかな空気が流れていく。

魁聖「ああそうだ。次の散髪なんだが、良かったら迎えに行かせてくれないか?」
紀菜子「え? 迎え、ですか?」
魁聖「いつも紀菜子ちゃんにはわざわざ来てもらっているからな。偶には俺に迎えさせてくれ」
紀菜子「そ、それはありがたいですけど……」
魁聖「よし、それなら決まりだな」

紀菜子の返答に、笑顔を浮かべる魁聖。
一方で紀菜子は、魁聖の提案に疑問符を浮かべて首を傾げていた。
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