アタシより強けりゃネ[完]
「もう一度聞くけどさ、さゆみん」

バッグはフミくんの車で来るナオキに預けているから、手ぶらの私とクニチカはぷらぷらと歩きながら話す。

「うん」
「俺、さゆみんより強いってことではないけど…付き合ってくれるの?」
「うーん、そこだよね…」
「えっ?迷いがある感じ?俺、ダメな感じっ?」

長い腕をあちこちに動かす謎ジェスチャーに私の手を巻き込みながら、クニチカは私の顔を二度見してからガッツリと視線を合わせた。

「迷わないよ」
「安心、オーケー?」

なんだソレ…と思わないでもない言葉に頷いたあと

「そこっていうのは強さの定義」

最近感じていたことをクニチカに伝える。

「クニチカも知ってると思うけど…アタシはここ最近、急に同級生と関わることが増えたの。ついでにナオキ兄たちともね」
「うん。ここ最近だね」
「で、みんなを見てるとクニチカは強いと思ったの。無駄に言葉で人を攻撃しないし、バタバタと慌てることも少ないし…でも自分の気持ちをストレートに出せる。すごく強い人に思えて、アタシにない強さで、カッコいいよね。尊敬す…」
「ヤッタ……俺…さゆみんにカッコいいって思われてる…カッコいいっ」

私の言葉に被せて小さく叫びながら、彼は腕をブンブンと振った…腕の長さが違うからキツいんだよね…

「ッ…ぅ…さゆみ…ん…ぃった…」
「あ、ごめん…腕ブンブンがキツいと思ったら反射的に腕をキメてしまいました…ごめん…」
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