アタシより強けりゃネ[完]
「邦親って?名前呼び成立してんの?僕も名前で呼んでよ、西名ちゃん」
「ナオキ?」

おいっ、すんなり呼ぶのか?まあいい、俺はさゆみんで、直季は西名ちゃんだもんな。別枠で別格だよ。

「さゆみん、何食べる?」
「定食」
「すっげぇ即答」
「迷うのも面倒かな…だいたい学食に来る日ばかりじゃないし。クニチカとナオキはいつも食堂?」
「ほぼほぼ」
「たまーに売店」

学食の入口でさゆみんを先に通すと

「定食、大盛りでお願いします」

全くメニューを見る素振りも見せずに、彼女はカウンターの向こうに伝えながらトレイを手にした。

「回鍋肉だって、さゆみん」
「ん」
「俺も定食、大盛りで」

彼女の視線は目の前に次々置かれる、茶碗や汁椀に向いたままでさっさとトレイにそれを置くと

「ありがとう」

カウンターの向こうへ視線を送った。俺…ここで“ありがとう”ってあまり聞いたことないし、言ったこともないかも…

「…どうも……ありがとう」

俺もそう言ってみると

「ハイハイ、ありがとうね。しっかり食べて」

と中のオバチャンが笑う。うん?どうした?さっきまでの素早い動きを急に鈍らせた俺の前のさゆみんに

「どうした?デザート、食べるか迷ってんの?定食、食べ終わってから、いけたらいけば?」

と言う。大盛り定食のあとだからな。

「…うん…だね。小さな蕎麦を迷ってたんだけど…後で決める」

……うん?デザートじゃなく蕎麦?
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