このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 クライブはあきれたように肩を上下させる。
「まぁ、マリアンヌの世話ができるような人間を探していたのは事実だ。その結果、オレとお前が結婚することになったのは、すべてあいつの暴走のせいだからな」
「ええと、私は陛下にうまく丸め込まれたというわけですか?」
「そういうことだ。お前だけでなく、オレもな。だが、結婚した以上、オレはお前に不自由させるつもりはない。一応、オレの妻となった人物だからな」
 先ほどから、ちょくちょくと心に刺さるような言い方をしているのだが、わざとなのか無意識なのかがわからない。
 だがイリヤとしてはどうでもよかった。
 契約結婚だろうが雇用結婚だろうが、やっとマーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げ切ったのだ。
 マリアンヌはかわいいし、妹たちの昔を思い出す。
 ほくほくと幸せに満ちた笑みを浮かべ、これからの生活を勝手に思い描いていた。
 だからその夜、いきなりクライブが求めてくるとは、思ってもいなかった。
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