靴擦れだらけのシンデレラ

嫁ぎ先の真実


「花ちゃ~んおめでとう~!あんな丸くて臭そうな気持ち悪いおじさんに見初められたのかしら?灰皿が無くなって寂しいけどお幸せにね~。」
「おめでとうゴミ箱が見つかって。これでゴミ臭くならないからさっさと出てって。」
「唐揚げ1キロ買ってきて。」

家に帰ると先に戻った継母達が私の顔を見てニコニコと笑顔で毒を吐く。もはや当たり前過ぎる暴言に心が痛むことはないし、次女の唐揚げの要求はもはやキロ数単位なのが勇ましい。

「おい花~良かったな~。優しそうな人で!我が氏家会社も桜小路と手を取り合って更に拡大するよう頑張るからなぁ!いやぁ施設に捨てなくて良かったぜ。」

パパもニコニコと着ていたスーツの背広をバサッとソファーに置いて大笑い。

皆浮かれて、保証もない勝手な未来予想図を組み立ててどうかしてる。継母達は桜小路グループの企業の一つ、美容形成外科に無料で受けられるのかしら?と強欲どころかそれちょっと厚かましいよね?の発言をかまし、パパは海外の支社を増やすかぁと言いながら向こうにいるであろう、金髪のお姉ちゃんの愛人の事で鼻を伸ばしていた。
なんならおこぼれを貰えるかもと高橋さんまでもがちょっと鼻の下が伸びているが、高橋さんはそろそろ自粛して欲しい。

着物を自室で脱ぎ、電気をつけないと昼間でも部屋が暗いクローゼットにかけてため息を吐く。あーぁ本当に嫁ぐのかぁ、ていうかお饅頭さんの正体、実は明かされてなくない?そもそも桜小路の名字だけで何処の桜小路の立ち位置なのかも聞いていない。
なんか下手したら騙されてない?…だけど。

「ちょっと!!ゴミが持ってるバックとかよこしな!もう要らないでしょ!」
「唐揚げ買ってこいよ!コロスぞ!」

ドンドンドンドン!!と壁を叩いてるかと思いきやちょっとタイキックの練習ですかと言わんばかりの蹴りの威力のドゴンドゴンと音が部屋中に響きわたる。怖いからぁこれ、洋画でけっこう犯人に追い詰められてるシーンですからぁ脇役の私既に殺されますからぁという風景にも、ようやくオサラバか…。と、思っていたら

「どけ!デブ!おい、きたぞ!!」

ドア越しからパパが明らかに次女をDISった発言と共に予想よりも遥かに早いお迎え。着物を脱いだばかりにこっちの荷造りも完了しているわけもないのに、どうやら桜小路が氏家 家に到着したらしい。

慌ててクローゼットから長女が思ったのと違うと捨てていた服をゴミ箱からこっそり持ち去った、高そうなワンピースに着替えて慌ててドアを開ける。
あ!パンツ!靴下!…いいやお饅頭さんにパンツ買って貰う!と思って急いで玄関に向かうと、パツパツのスーツを着たお饅頭さんと、逃亡中に出てくるハンターのようなサングラスをかけた男の人が立っていた。

その圧倒的権力者の姿にパパと継母と長女が言葉を飲み込み、私とお饅頭さんに作り笑いを浮かべ、サヨナラ~と手を振る。
次女は本能的に何かを察知したのと、パパの【デブ】発言にキッチンで隠れて泣いている。その二文字で泣くとかメンタル小枝かよ!

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