靴擦れだらけのシンデレラ

夢のまた夢のような日々が過ぎていく。
だけどビックリ現実で、非日常とはこの事を言うのですか。

蒼真さんが行ってきますとただいまのキスをしないと「私の事嫌いになったのか?」と何処のメンヘラ?みたいな台詞をかまして本気で拗ねてしまう。私の唇は接吻のし過ぎで某ハリウッド女優のようなぷりっぷりの腫れ具合。

そして毎日私の手料理を食べる蒼真さん。自宅にいる時に実は管理栄養士と調理師免許を取得している高スキルの持ち主高橋さんから沢山学んだ料理のイロハ。
料理は意外と自分の中で好きだったのだと蒼真さんの食べる顔を見て初めて気付く。

「花が作った和食を食べると、桜小路が携わってる飲食店を花の味にしてもいいくらいだ。あ、でもそれだと私以外の者も花の味を知ってしまうのか。それは嫌だな…。私だけしか知らない私だけの特権にしたい。」

背筋を伸ばし箸を持つ手、食べる動作、全ての所作に品があり、そして尊い。なのに口から出る台詞は何処かお花畑で私の頭も見事な満開になる。

「しかし私は本当の花の味をまだ食べていない事が心苦しいよ。我慢をするとわかっていても、花のその愛しい顔を見て胸の底から沸き上がる熱いものを抑えるのに毎日必死だ。」

朝ごはんを食べ終わり、アイランドキッチンで洗い物をする私の後ろに立ち、傷を避けながら腰や私のお尻に優しく手を回し、隠そうともしない欲情の言葉をデザートのように甘くしっとり囁いてくれる。

「…我慢しなくても…その…。」

抱いてくれちゃってもいいんですよ!?と、思わずこっちから脱いでやろうかこのパンツと思ってしまうが、やはり幼少期から紳士な教育を受けているのか、

「傷の痛みに耐えながら愛を確かめ合うものではない。」

と、キッパリ断言されてしまう。だが、

「その代わり私の愛は今まで我慢した分、重くて長くて寝かせない夜が毎夜続くのは先に言っておくからな。」



…スッポンのエキスを飲んだ方が良いのはどうやら私かもしれない。
ニンニク、うなぎ、そして牡蠣。それらを用意する私の決戦はいつになるだろう。

「そういえば今日はそう太が花のクリニックに付き添いに付いてくれるが、そう太に合わせて甘いものに付き合わなくていいからな。」
「でも…そう太さんの行くお店って見たことも食べたこともないメニューばっかりで私も楽しいんですよ。」
「気に入った店があるなら買うぞ?」
「何を?」
「店を。」

王族か!!規模が違う!コンビニのちょっとお高めのデザート買う感覚か!
ていうか好きなものを買えと渡された金持ちしか持てないラグジュアリーカード、コンビニで出しづらいわ!


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