【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
私が言葉を失うと、それを見た大地は肩をすくめてみせた。

「ま、そんなことしたら、あんたがおれなんか相手にしなくなるだろうから、しないけどさ」

私に背を向け、大地は布団に潜りこむ。
かすかに見せられた寂しそうな表情に、思わず大地の肩を引き寄せる。

「……何度も言うけど……あんたも、『大地』なのよ? だから、私にとっては、あんたも大事な存在なの。
どちらも大切にしたいと思っているんだから、変な言い方、しないで」
「───気が多いんだな、あんた」

肩ごしに、冷めた目で大地が私を見る。
……なんで、こうなっちゃうんだろ。

「ねぇ、大地……私は、いまのあんたにも、もう一人のあんたにも『消えて』欲しくないの。
榊原医師にも言ったわ。あんた達ふたりを、ひとつにして欲しいって」
「……ごった煮スープって、不味(まず)そうだよな」
「は?」
「ふたつの人格をひとつにするなんて……言い方を変えれば、そういうことだろ? ……味の調和は、とれるのかってことだよ」

大地が本棚を指して、私に向き直る。

「あんた『五番目のサリー』って知ってるか?
五つもの人格を抱えた女が、精神科医によって人格を統合してもらう話だけど……話は、統合したとこで終わってるんだ」

大地のいわんとすることの意味をはかりかねて、大地を見つめた。
その眼が、複雑な色彩を放って、私を見返す。
< 100 / 140 >

この作品をシェア

pagetop