【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「───日曜日とかも仕事なんスか?」

平日の夕方。
僕の聖地である『シャルル・エトワール』のシュークリーム売り場で、そんなことを言っている馬鹿男がいた。

小売業が土日祝日が書き入れ時なのは、小学生にだって解ることだろう。
なに当たり前のことを()いてるんだ、こいつは。

「そうですね、基本的には……」

言って、愛想笑いを浮かべるまいさん。
仕事用のそつのない笑顔にも関わらず、僕の胸にはモヤモヤとした感情がわきあがる。

───以前は、こんな風に不快な気持ちになることは、なかった。

むしろ、
「さすが僕のまいさん。いろんな人にモテモテだなぁ。……まぁ、当然だけどね」
なんて、少し誇らしい気分にすら、なっていたのに。

「なるほど~。客商売っスもんね~。大変っスね!」

それが解ってるなら、さっさと立ち去れよ。
……という僕の心の突っ込みをよそに、その男はヘラヘラと笑って、なおも下らない話を続けていた。

こんな時、透さんなら、
「二秒以内に失せろ、クソが。」
で、追い払えるんだろうな。

だけど、僕のキャラじゃない。

少なくとも、まいさんにとってはそんな《下品な物言いをする僕》は、受け入れ難いだろうなぁと、思う。

だから《人畜無害な紳士な僕》は、こう言って邪魔をするのが精一杯。

「すみません、注文良いですか?」
「───あ。いらっしゃいませ! どうぞ?」
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