死に戻り令嬢と顔のない執事
その日からずっと、ツルギはリーシャのために生きてきた。彼女の幸せを願い、笑顔を願い、そのために骨身を惜しまず尽力した。
ツルギはただ、リーシャが笑ってくれればそれで良かった。
だからこそ、ハロルドのことが許せなかったのだ。リーシャを振り回し、傷つけ、彼女の献身を歯牙にも掛けない男。ツルギ以上に、リーシャを幸せにすることのない存在。
……それなのに何もできない自分が歯痒かった。
リーシャがいっそ逃げ出したいと言ってくれればできることもあったのに、責任感が強い彼女がそんなことを口にするわけもなく。弱音を吐くことなく無理な笑顔で笑って、ひたすら耐えて。
――そして彼女は呆気なく、無実の罪で投獄されてしまった。
あの男の愚行が婚約破棄だけであったなら。
むしろツルギはそれを喜んだことであろう。彼女が実家から勘当されようと、社交界から後ろ指を指されようと自分が守るつもりだった。
大切に大切に彼女を保護して、外の世界から遠ざけて。二度と傷つくことのないように心地好い空間にリーシャを閉じ込めて、爪の先までたっぷり甘やかしてあげたのに。
それなのに、愚かにもあの男はリーシャにありもしない罪をなすりつけたのだ。彼女を開放することなく、あの男は彼女の死すらしゃぶり尽くそうとしている。
許せない。許すものか。絶対に、後悔させてみせる――!
激情に身を焦がしながらも、ツルギは冷静であった。今大事なのは何よりもまず、リーシャの無実を証明して身の安全を確保することだ。
そのために休む間もなくツルギはあちこちを奔走し、情報をかき集めた。
寝る間を惜しんで駆けずり回って、どんな小さな情報でも確かめて。
……そして、その執念がついにそれを見つけ出したのである。