元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜

ノロケなわけないでしょう!

 翌朝、誰かがノックする音で目が覚めた。寝ぼけ眼を擦りながら起き上がり、こんな朝から誰だろう、と思ったのも束の間。

「起きてるか? 入るぞ」

 飛鳥の声に飛び起きた。

 私、昨日からアイツと同棲してるんだった! 不本意だけど!

「ちょっと待って!」

 慌てて寝起きの髪を手で押さえつけるも、ガチャリと扉が開いた。

「そんなん、やったって何も変わんねーよ」

 キッと睨むも、飛鳥は全く悪びれずにベッドサイドまでやってきて、その縁に腰を下ろした。

「そのまんまでも可愛いってこと」

 かぁぁぁあ、と謎の音を立てて頬が火照る。そんな私に、飛鳥は満足したようにニヤリと口角を上げた。

「これ、今日の服。飯の用意しとくから、着替えたらダイニング来いよ」

 飛鳥はそう言うと、ローテーブルの上にブラウスとスカートをバサリと置いて出ていってしまった。

 拾い上げてみる。クリーム色のボウタイブラウスに、パステルオレンジ色のひざ下丈のスカート。よく見れば、白色の小さな花が散っている、おしゃれなデザインだった。

 こんなの、似合うわけ――と思ったところで、いつもの恰好でダイニングに向かったところを想像する。

「は? 何で着てないの?」

 怪訝な顔で私を睨む飛鳥が脳裏に浮かび、ため息をこぼした。そんなことで、喧嘩なんかしたくない。

 仕方なく用意してもらった服に着替え、髪を整えてメイクをした。明るい色の服を着るのは久しぶりだ。メイクも、いつもより入念になってしまった。
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