雨降る夜に君を想う

彼の気持ち

それから3ヶ月、、、


蓮くんへの想いが冷める様子は全くないけど、私は仕事と家事に追われる忙しい日々を過ごしていた。

そしてついにトヨテのテレビCMが完成した。
放送はまだまだ先だけど、ひとまずCMの完成を祝って、今日はトヨテとうちの会社のチーム12人全員で打ち上げをする。

打ち上げ場所は、うちの会社にある打ち上げ用のパーティールームを借りておいた。

「「「「お疲れ様でしたー!」」」」

一応業務時間内でお酒は飲めないのでジュースを片手にみんなで乾杯した。

蓮くんと目が合う。

あの夜以降、私達が仕事の話以外の話をする事は無かった。
蓮くんはどう思っているのだろう?よくある一夜の過ちなのか、それとも私の事が好きであんな事をしたのか?蓮くんもしかして私を避けてる?
そんな考えが頭を巡っていた。

17時半を回った頃、みんなはまだ話をして盛り上がっていたが、私は定時の18時に帰らないといけないため、みんなが気づかないよう急いでみんなが使った食器をもって隣の部屋のキッチンに向かう。

腕まくりをしてお皿を洗おうとすると、

「手伝うよ。」

背後から蓮くんの声がした。

「大丈夫だよ!蓮くんまだみんなと話してたでしょ?」

そう言うと、

「流石に怜さんだけにお皿洗わせるのは悪いよ。一緒にやろう。一緒にお皿洗いするのもきっと楽しいよ!」

どこかで聞いた事のあるセリフに、思わず笑ってしまった。

「私の真似しないで〜」

そう言って2人で分担して食器を洗った。
蓮くん、私を避けていたわけじゃなかったのかな、とにかく以前と変わらない蓮くんの様子に少しホッとした。

「部下にやらせればいいのに、怜さん自分で食器洗いして偉いね。」

「今日の打ち上げ、全部部下に準備任せっきりだったから、これくらいやらないと悪いなと思って。」

「怜さんはほんと、優しいね。」

そう言われ、"私優しくなんてないよ、ずるい女だよ"そう心の中で思いながら、何も言葉を返せずにいた。

すると、

「この前のこと、どう思ってる?」

突然蓮くんが言う。聞くまでもなく、あの夜の事だろうと勘づく。

「どうって、、、」

「過ちだったと思ってる?」

あんな幸せな夜のことを過ちだとは言いたくないけど、蓮くんに思わせぶりな態度はできない。

「あの夜は本当に楽しかったし幸せだったけど、過ちだったと思ってる。私は結婚してて、今後何があっても祐介と別れる事はないと思う。だから蓮くんにも祐介にも悪かったと思ってるし、絵梨奈と悠人くんにも、4人の仲を壊すような事をしちゃって、申し訳なく思ってる。」

そう言うと蓮くんは、寂しそうに、

「そっか。」

とだけ言った。
蓮くんの気持ちも聞きたかったけど、怖くて聞けなかった。
食器洗いが終わって、みんなの部屋に戻ろうと電気を消してドアノブに手をかける。
すると後ろから蓮くんが私の事を抱きしめた。
私は、ドアノブにかけた手を止め、みんなに気づかれないよう、そっとドアに鍵をかける。今この状況を誰かに見られてしまったら、私たちはおしまいだ。

「蓮、くん、、、?」

「俺、あの夜のことが忘れられない。怜さんの事が忘れられない。どうしても忘れられない。あれから怜さんと距離をとって、どうにか忘れようとしたけど、忘れられなかった」 

蓮くんは辛そうな声で言った。それは私も同じだ。きっと私の方が忘れられてないよ。今でも気づいたら蓮くんの事考えちゃってるよ。蓮くんが好きだよ。そう言いたい気持ちを抑えて、涙を必死に堪えて、蓮くんの手を振り解く。

「忘れられないかもしれないけど、それでもダメなんだよ。」

そう蓮くんに言いながら、必死に自分に言い聞かせてた。

私は泣いているのが蓮くんにバレないように、蓮くんを暗い部屋に1人残して、急いで部屋を出た。

暗闇で、蓮くんの目が光っているように見えた。蓮くん泣いてたのかな、、、。

もうCMが完成して会うこともないだろうから、その答えは一生わからないかもしれない。

そう思ったらまた涙が出てきて、会社のみんなにバレないようにさりげなく涙を拭いて、いつも通り明るく挨拶をして会社を後にした。
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