【リレーヒューマンドラマ】佐伯達男のおへんろさん

【『もうやめたい…』】

その日の夜遅くだった。

ところ変わって、小さな居酒屋にて…

やりきれない表情を浮かべている私は、ひとりで酒をのんでいた。

テーブルの上には、日本酒2合とつまみは冷やっことエビチリがならんでいた。

店内の有線放送《ユーセン》のスピーカーから花咲ゆき美さんの歌で『冬の蛍』が流れていた。

つらい…

すごくつらい…

早いところ手遅れにならないうちに辞表を出さなきゃ…

この時だった。

上の人が私のもとにやって来た。

「お前さん…ここにいたのか?」

上の人は、ニコニコ顔で『座ってもいいかな?』と言うた。

私は、怒った声で『ひとりにさせてください!!』と上の人に言うた。

上の人は、ヘラヘラ嗤《わら》いながら私に言うた。

「そんなに怒らなくてもいいじゃないか…」

上の人は、私に対してヘラヘラ嗤《わら》いながら『また明日も頼むよ…』と言うたあと肩をポンポンとたたいた。

こわい…

このままだと…

私は…

飼い殺しになる…

手遅れにならないうちに…

早く逃げなきゃ…

逃げたい…
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