【リレーヒューマンドラマ】佐伯達男のおへんろさん

【ラクチンの代償】

今から23年前のことであった。

K医大を卒業した私は、コネで横浜にある大学病院に就職した。

そこで研修医を務めたあと外科医として働き始めた。

この当時、私は主任外科医に出世した頃であった。

同期には負けたくない…

オレがトップで昇進するのだ…

私の頭は、ドーキで一番に出世することしか頭になかった。

この時、私は36歳だった。

ところ変わって、大学病院の中にある私の診察室にて…

私の上司である外科部長が診察室にやって来た。

「じゅんぞうさん、今夜一緒にばんごはんを食べに行かないか?」
「ばんごはんですか?」
「つもる話がたくさんあるのだよ…一緒に行こうよ。」

私は、外科部長からのお誘いで横浜市内《しない》にある割烹料亭《りょうてい》に行った。

ところ変わって、横浜市内《しない》にある割烹料亭《りょうてい》にて…

個室では、大学病院の理事長がいた。

テーブルの上には、割烹仕出し弁当の重箱がならんでいた。

「失礼します。」

和服姿の仲居《なかい》さんが部屋に入ってきた。

「お客様2名がご到着なされました。」

その後、私と上司の外科部長が仲居《なかい》さんと一緒に理事長が待っている個室に入った。

最初の30分は、夕食を摂りながら、ざっくばらんにお話をした。

このあと、本題に入った。

「ところで…じゅんぞうさんは、36だよね。」

理事長の問いに対して、私は『はい』と答えた。

理事長は、私に対して『あれは…まだなのかね?』とたずねた。

私は『あれって…なんでしょうか?』と理事長にたずねた。

理事長は、私に『ケッコンだよ…』と言うた。

私は、自分の結婚は一切考えていなかった。

私は、戸惑いぎみの声で言うた。

「あのー…どうしても結婚しないといけないのでしょうか?」

理事長は『何を言っているのだね!!』とあつかましい声で言うたあとものすごくいらだった口調で言うた。

「30半ばを過ぎたら、結婚の条件が(少しずつ)悪くなって行くのだよ!!」
「おことばを返すようですが!!」

私が理事長に反論しようとした時であった。

外科部長が私に対して『じゅんぞうさん!!』とあわてた声で言うて止めた。

その後、私の頭を右手で押さえつけたあと『お受けいたします。』と言いながらおじぎをさせた。

私がK医大を卒業した後、研修医として大学病院に来たときの教育係が外科部長だった…

私の父親が戦時中に理事長と同じ部隊に所属していた戦友だった…

父親が戦友である理事長に大金を貸していた…

…と言ういきさつがあったので理事長の一人娘とお見合いして結婚しろと言うことであった。

ほかにも、理事長はうちに対してお世話になったいきさつがあった…

…の理由で、今回のお見合いを断ることができなかった。
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