【リレーヒューマンドラマ】佐伯達男のおへんろさん

【こんなはずではなかった…】

それから私と妻は、怒鳴り合いの大ゲンカを繰り返すようになった。

大ゲンカの原因は、はっきりとは言えないが妻の元カレのことだと思う。

毎度のように、家中に怒鳴り声が響くほどの大ゲンカが繰り広げられた。

近所の人々は『またじゅんぞうさんカタの家は夫婦が怒鳴り合いをしている。』と口々につぶやいていた。

それがしは、長男と長女の接し方に大きな問題が生じた。

私はこの時、仕事が多忙になったので子育ては全部妻に丸投げした。

妻も、気持ちにゆとりが持てなくなった。

この時妻は、長男に対して『一流の私立小学校』のお受験を押し付けて勉強漬けにした。

そして、お受験は不合格に終わった。

長男は、地元の公立小学校に入学した。

長女はミッション系の私立の女学院に見事合格したので、を小学校から大学・短大までラクチンエスカレーター式で過ごした。

私は、仕事を理由に家庭から逃げ続けてばかりいた。

これにより、妻のイライラはさらに高まった。

妻は、イライラすると長男に八つ当たりした。

この時、長男は学校の成績が良くなかった。

妻は、長男にいつもこう言うた。

「どうしてこんな悪い点を取ったのよ!!勉強する気はあるの!?お父さんは、同期でトップで外科部長になったのよ!!悔しかったら、お父さんのような人間になりなさい!!」

これに対して、妻は長女にほほえみで接した。

「(長女)はよく勉強ができるから百点満点が続くわね…イイコイイコ…」

妻がふたりの子どもに対して不公平な態度で接するようになった。

それが原因で、長男は家族に対して攻撃的な態度を取るようになった。

長男が中学3年生になった時であった。

長男は、進学する高校がないまま中学を卒業した。

進路面談の時に、長男は担任の先生から公立はムリと言われた。

それが原因で、長男は勉強をしなくなった。

中学を卒業した長男が高校に行けないことを聞いた私たち夫婦は、知人に助けを求めた。

長男は、知人のコネで私立高校に入学した。

しかし、長男は学校で暴れるなど…問題を起こした。

1年の二学期のコンダンカイの時に、妻は担任の先生から長男の暴力の問題がひどいからやめてくれと言われた。

妻は退学だけは回避してほしいと担任の先生に頼んだ。

妻は、多くの知人に頼んで長男の退学を回避するための署名活動をした。

これには、長男が強く反発した。

署名活動をするのはひきょうだ!!…と言う長男…

せめて、高校だけでも卒業してほしいと願う私たち夫婦…

…は、深刻な対立を生んだ。

その結果、私は長男に『出て行け!!』と怒鳴った。

長男は、本当に家出した。

同時に、長男は私立の高校をやめた。

それを機に、私たち夫婦は長女をデキアイした。

時は流れて…

長女がミッション系の私立の女学院の短大を卒業することが確定した年の11月のことでありました。

長女は、卒業後は保育士さんになることを目標に日々を過ごしていた。

この時、私たち夫婦は長女にムコを迎えると決めた。

同時に、知り合いの弁護士さんに頼んで私たち夫婦の遺産相続でもめることがないようにするために長女と長女のムコになる男性に遺産が行き渡るように手続きした。

長女のムコになる男性は、現職の副理事長の三男さんであった。

この年の12月に、私は副理事長になることが決定した。

現職の副理事長との間での事務の引き継ぎなど取った。

11月22日にすべての手続きが終了した。

あとは、ムコを迎える準備だけであった。

11月22日の夕方頃であった。

私たち夫婦は、長女を呼んで家にムコを迎えると伝えた。

しかし、長女は激しく反発した。

「結婚!!どうしてアタシのいないところで決めたのよ!!」

長女の言葉に対して、妻はこう説明した。

「お父さんがこの12月に副理事長に就任することが決まったのよ!!それは、分かっているよね…お兄ちゃんが家出したから…男の子が家にいないのよ…お願い…お父さんが理事長に出世したいと言うてるのよ!!…もう、決まったのよ!!」

私も『頼む、この通りだ!!』と長女に言うた。

『アタシの生き方を勝手に決めないで!!』と言うた長女…

『おとーさんとおかーさんの願いを叶えてくれ〜』と言う私たち夫婦…

双方が対立したので、コウチャク状態になった。

この時であった。

愛知県豊川市の信金で、男が刃物を持って信金の職員と女性客の合わせて8人を人質に立てこもった事件が発生した。

容疑者の男は、家出中の長男だった。

事件現場に、長男の退学した私立高校の身分証明書が落ちていた…

それで、家出中の長男が容疑者であることが分かった。

翌日の深夜だった。

現場を包囲していたサット隊員が中に突入した。

「人質は全員無事です!!容疑者の身柄は確保されました。」

人質になっていた信金の職員さんと女性客合わせて7人は全員無傷で救助された。

長男は、愛知県警に逮捕された。

しかし、私たち夫婦は長男を戸籍から強制的に外したのでどうでもよかった。

長女にムコを迎えて、家を守る…

それしか頭にない…

約1ヶ月かけて、私たち夫婦は長女を説得した。

長女がやっと折れたので、私たち夫婦はムコを迎える準備を続けた。

そして、長女はミッション系の私立の女学院を卒業した。

卒業式の翌日だった。

ところ変わって、保土ヶ谷区にある白い教会にて…

この日、長女とムコの挙式がひらかれた。

私は、長女と一緒にバージンロードを歩いて、ムコの元へと行こうとした。

その時であった。

「待ってよ!!」

この時、マタニティー服を着た女性が押し掛けた。

教会に押し掛けてきた女性は、妊娠8ヶ月だった。

女性は、ムコに対して怒った声で言うた。

「アタシの胎内《なか》にいる赤ちゃんを一緒に育てようと言うたのはウソだったの!?」

女性は、激しく泣きながらムコを怒鳴りつけた。

ムコは『ぼくは知らない!!』と一点張りになって拒否した。

周囲がザワザワと騒いだ。

対応しきれなくなったムコは、隠し持っていたナイフで女性を切りつけて殺した。

(ぎゃあああああ!!)

周囲に悲鳴が響いた。

その後、数人のチンピラが押しかけてきた。

「死ねや!!」

(ズドーン!!ズドーン!!)

ムコは、チンピラが持っていたテッポウに撃たれて殺された。

長女は、救急病院に救急搬送されたがコンスイ状態におちいった。

あとになって、長女と結婚する予定だったムコがヤクザとトラブルを抱えていたことが分かった。

ムコに凄んで行った女性は、別れ話のもつれが原因でトラブルを抱えていたことが分かった。

それから2ヶ月後であった…

長女は、一命をとりとめたが長期入院生活を送ることになった。

同時に私は、副理事長を辞任した…

また同時に、大学病院をやめた…

そして、四国へんろの旅に出た。

そしてまた同時に…

妻と別れた。
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