アイドルしてる君には。

4話

6.陽真里ちゃん

「谷口さんっ。聞いちゃったんだけどconnectの紘くんと幼馴染なの?」
「え!あーうん、一応ねっ!」

「実はね、connectのコンサートチケット余ってるからもし良かったら一緒にどうかな?」
こんなに目を見つめられて言われたら断りにくい。
「えっと、、うん。私でよければ、、」
「ありがとー!!!」
陽真里ちゃんはニコッと笑って私の手を握った。

「サプライズでいこーよ!絶対紘くん喜ぶよ!!」
「そうかな、、」
「絶対そう!楽しみだなっ」
「陽真里ね、紘くんの絶対にファンを裏切らなさそうな感じが好きなんだ!」
「、、、そうなんだ。」


7.ごめんね。
花火大会の日まであと一週間だ。
もちろん紘くんと一緒に行きたい。
「陽真里ね、紘くんの絶対にファンを裏切らなさそうな感じが好きなんだ!」
この言葉が脳裏によぎった。
陽真里ちゃんみたいなファンが沢山いるのかな。

やっぱり諦めよう。
勇気を出して私は紘くんに電話をかけた。
「もしもし?紘くん?」
「優愛!優愛から電話くれるなんて珍しいね」
「あのさ、、花火大会なんだけどさ」
「うん。」
「やっぱり私一緒に行けない、、。」
「、、そっか。」
「ごめんね。せっかく誘ってくれたのに」
「良いんだよ、わざわざ連絡してくれてありがとね。」

紘くんはやっぱり優しいな。紘くんが取り乱してるところなんて見たことがない。
「優愛?最近学校はどう?なんか楽しいことあった?」
「なにそれ親戚みたい。」
「俺は優愛のこと、、妹みたいに思ってるよ」
紘くんは笑いながらそう言った。
「妹って、、、。
学校は楽しいよ。優愛お友達沢山できたし。もう少しで修学旅行もあるんだ。」
やっぱり紘くんにとって私はただの幼馴染で1人の女性としてみてもらえてないんだ。
私は紘くんに心配かけたく無い一心で咄嗟に嘘をついてしまった。
「そっか、、。それなら良かった」
「じゃあまたね」
「またね。」

7.コンサートの日

「谷口さん!!こっちこっち〜!」
陽真里ちゃんの参戦服は真っ白なワンピースでいつにも増して美しかった。
「アイドルのコンサートとかはじめてだから緊張するな〜。」
陽真里ちゃんに案内された席はまさかの最前列だった。
「ほら、はじまるよっ!」
私は陽真里ちゃんから渡された紘くんのうちわを握りしめた。

歌って踊っている紘くんをこんなにちゃんと見るのは初めてだった。、、、かっこいい。

曲調が急に明るくなりメンバーのみんなが一斉に客席の方へファンサをするパートになった。
流石に紘くんのうちわの数は半端なくて、客席から紘くんを呼ぶ声が飛び交っている。


負けじと陽真里ちゃんも名前を呼んだ。
その声に気づいたのか紘くんはこっちを向いた。

          バチっ
私と目が合った瞬間、紘くんは時が止まったかのように立ち止まり目を見開いている。

しばらくして紘くんはいつものように甘く微笑み自分の立ち位置に帰っていった。
その目には少し涙が溜まっているように見えた。


バラード調のラブソングが始まった。
紘くんは涙を堪えられず、自分のパートをうまく歌えなかった。
「紘くんどうしたの、、」
「叶わない恋とかしてんじゃない!?」
「ファンのこと思って涙流すとかほんとアイドルの鏡!」
など客席はザワザワとしている。

最後のMCが始まった。

「connectorのみなさん。今日は来てくれてありがとう。、、、えっと今日はちゃんと歌えなくて本当にごめんなさい。、、、個人的にすごく嬉しいことがあって、、。、、、、みんなが僕の名前を呼んでくれてるの全部聞こえてるよ?愛してますありがとう!」

やっぱりアイドルがいうセリフだな、、。
紘くんの涙は照明と相まってキラキラと宝石のように輝いていた。

「終わっちゃったねーー。」
「てかさ、谷口さんのことみて紘くん感動して泣いちゃったんだよあれ絶対!!」
「違うよ、、。」

「すみません。メンバーが少しお話ししたいそうなのでお時間あれば楽屋までご案内します。」
帰ろうとした時、スタッフにそう呼び止められた。
「ぜひっ!」
陽真里ちゃんに押されて案内してもらうことになった。


8.楽屋
廊下を歩いていると、ずっと待っていてくれたのか楽屋の前の壁に寄りかかってこっちをみてる紘くんがいた。

「優愛!!」
そう言って紘くんは私のことをギュッと抱きしめた。
「優愛、俺のコンサートなんか来てくれないと思ってたからすごく驚いた。」
「紘くん、、。なんで泣いてるの、、?」

「俺がアイドルの活動することで、優愛のこと傷つけて俺のこと嫌いになっちゃったはずだから、、」

「そんなわけないじゃん!!嫌いなわけない。。
大好きだから、、、。でもこんな気持ちアイドルの紘くんに言えるわけないよ、、。」

「優愛。」

紘くんは抱きしめるのをやめて、私の唇にそっとキスをした。

「優愛は俺にとって大切だよ?俺も優愛のことが大好き。」

「紘ーー!そろそろコメント動画撮るぞー!!」
他のメンバーの子が紘くんを呼んでいる。

やだ。離れたくない。紘くんとずっと一緒にいたい。

そう思っていると無意識に紘くんの服の袖を掴んでいた。

「優愛?」
「あ、ごめん。行って来なよ!!」

「今日はありがとね。まったゆっくり話そうね。」
そう言って紘くんはいつもみたいに微笑んで私の頭を撫でて、小走りで帰っていった。


「お似合いじゃん。」
振り返った陽真里ちゃんを見ると、なぜかいつもと様子が違くて真顔で目に光がなかった。

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