もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
陰口だけでなく、桜庭さん本人からは直接、暴言を浴びせられた。
『そんなダサい恰好で、よく外、歩けるよね。わたしなら無理』
『田辺先輩に色目使って、わたしの悪口言わせたんじゃないの? でも無駄。あんたみたいなブスがわたしに勝てるわけないじゃん』
『ほんと、グズだし、なんにも取柄ないよね、加藤って』などと、トイレや休憩室で顔を合わせるたびに言われ続けた。
何も言い返せなかった。
そんなことをしたら、余計エスカレートするんじゃないか。
それが何より怖かった。
でも、そんな自分が不甲斐なく、心は落ち込んでゆく一方だった。
次第に、人の顔がまともに見られないようになり、話す声も変に震えるようになってしまった。
すると相手に怪訝な顔をされて、ますます緊張が増して……接する人全員の視線が耐えられなくなった。
この人、わたしをどう思っているのだろうか、と。
今振り返れば、なんで状況を変える努力をしなかったのかと、自分でも思う。
でもわたしは、ことなかれ主義で、学生時代から面倒な争いに巻き込まれないように、極力目立たないように注意してきたから、逆に免疫ゼロで対処法がわからなかった。
それに渦中にいるときはまったく頭が回らず、ただ逃れたい、そればかり思っていた。
とにかく、そんな状況だったから、わたしは必死で両親を説得して、翌年の3月に会社をやめ、住居も書店の二階に移した。