魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「お兄様?」


 アルドリッヒ・アインホルン。オティリエの兄であり、次期アインホルン侯爵家の当主である。
 最後に会ったのは八年前なので、少し記憶と違うところがあるものの、なんとなく面影が残っている。オティリエに声をかけてきたことからも、アルドリッヒで間違いないだろう……そう思っていたのだが。


【嘘だろう!? 俺の妹はなんて可愛いんだ……!】

(え……? 今の、お兄様?)


 聞き間違いだろうか? オティリエは目をパチクリさせながらそっと首を傾げる。


【可愛い。亡くなった母様にそっくりだ。ああ、どうしてもっと幼い頃にたくさん会っておかなかったんだろう! そうすればオティリエの可愛さをこの目に焼き付けられたのに】


 口元を手のひらで押さえつつ、アルドリッヒはオティリエを見つめ続けている。


(どうしよう。やっぱり私の知っているお兄様じゃないかもしれない……!)


 驚くやら戸惑うやら。オティリエはその場に立ち尽くした。
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