魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「ああ、ヴァーリック殿下、先日はありがとうございました」


 それまでヴァーリックの存在に気づいていなかったのだろう。アルドリッヒがヴァーリックに向かって挨拶をする。


(そういえば視察の前にお会いになるっておっしゃっていたっけ……)


 特段言及がなかったため今の今まで忘れていた。


(一体どんなことをお話しになったのだろう?)


 もしかして、アルドリッヒの雰囲気が以前と違うのは、ヴァーリックが彼の魅了を解いたからなのだろうか?
 内心ドキドキしながらオティリエは二人のことをじっと見つめた。


「こちらこそ、とても有意義な時間だったよ。オティリエの幼い頃の話を色々聞けて嬉しかった」

「え? 私ですか?」


 思わぬことを言われてオティリエは目を丸くする。ヴァーリックはクスクス笑いながら「うん」と軽く相槌を打った。


「赤ちゃんの頃の愛らしさとか、はじめて歩いた日の話とか、好きだったおもちゃ、おしゃべりの様子とか他にも色々」

「そ、そんなことをお聞きになったのですか?」


 恥ずかしさのあまりオティリエの頬が紅く染まる。


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